伊岡瞬「明日の雨は。」

伊岡瞬の連作短編作品「明日の雨は。」読了。第一話「ミスファイア」から第六話「グッバイ・ジャングル」までの連作で、主人公は公立小学校の非常勤の音楽教師、森島巧。

育児休業になった女性音楽教師の臨時として赴任した23歳の森島巧先生が、非常勤ながらも教師という職業に真剣に向き合っていく姿が描かれます。

「ミスファイア」は、いわゆるモンスターペアレントの母親に教師たちが翻弄されている姿に立ち向かう森島先生。放火事件が発生するなど、不穏な展開もあるが、探偵心を発揮して、モンスターな母親たちに癖壁としている子供たちの心を見抜き、丸く収める。

第二話「柔らかい甲羅」は、課外授業の一環で訪れた動物園で高価な亀が盗まれる事件が発生。一人の女子児童が犯人ではないかとの噂が広がり、森島先生が本人の自宅まで言って確認することに。その児童はクラスでも浮き上がった存在で、プールにも入らない。森島が自宅を訪ねると児童はただただ謝るばかり。母親や父親の態度に不信を抱いた森島は、彼女が虐待を受けていることに感づく。彼女は体にタバコの火を押し付けられるようなひどい虐待を受けていたのであった。

第三話「ショパンの髭」は、もう一人の音楽専門教師との葛藤を描く。白瀬先生は女性音楽教師でプライドが非常に高い人。そんな彼女のせいで元々歌が上手だった児童がうまく歌えなくなってしまう。森島はその児童から事情を聴いて、特訓してうまく歌えるようにする。

第四話「家族写真」は、3年生のクラスの先生が授業中に居眠りをして、その間児童たちは好き勝手なことをしている様子を見た森島先生が、居眠り先生の家庭事情を、すなわち、子供が生まれてすぐに亡くなり、妻がノイローゼになってしまい離婚、その元妻を毎日見張っているという切ない事情を知ることに。その先生は学校をやめていくことに。

第五話「悲しい朝には」は、6年生の女子児童の母親から、児童が私立中学に合格したことをみんなの前でほめてほしいと頼まれる。担任ではないことで一度は断るが、つい、音楽の時間にそれとなく褒めてしまう。それが敏感なほかの児童に疎まれ、森島は総スカンとなる。女子児童もまたいじめの対象となってしまう。おまけに、森島はバイク事故を起こして瀕死の重傷を負うことに。命に別状はなく、数日の入院で済んだものの、痛い経験をする。

第六話「グッバイ・ジャングル」は、いよいよ契約終了の3月と卒業式。森島はかねてから友人の誘いを受けていた就職先への転職を決めたが、最後に生徒たちと何とか和解したい。そんな中学校では3年生を中心に学級崩壊が発生し、大騒ぎの状態。森島も沈静化に駆り出され、何とかおさまり、卒業式への出席も許される。

森島は、結局転職はするものの、小学校の全科目教員免許取得を目指し、晴れて数年後に小学校教師となるのでした。

どの話も引き込まれる魅力があり、面白い作品でした。

今日はこの辺で。