籠池泰典・赤澤竜也共著「国策不捜査『森友事件の全貌』」

森友事件の真っただ中の人物である籠池泰典氏がノンフィクションライターの赤澤竜也氏と共著した「国策不捜査『森友事件の全貌』」を読了。480Pの大作ながら、当事者が語る森友事件の真相については、非常に迫真力があり、興味深く読ませていただく。

政権が宣伝するように、嘘つき・詐欺師の著作と考えれば、この著作自体が嘘の塊となるが、籠池氏と接してきた元NHK記者の相澤冬樹氏が言うように、「正直な人」という印象が正しいのではないか。相澤氏が週刊文春で亡くなった近畿財務局の赤木氏のスクープが出る前の著作であり、籠池氏もA氏として取り上げていますが、人柄の描写などはぴったり。また、事件の推移からみても矛盾がなく、「彼が嘘をついている」という事件関係者の生の声は、公の場で一切聞かれないことも、籠池氏の主張の方が辻褄が合っていると言わざるを得ない。したがって、私は昭江夫人から100万円もらったことや、8億円値引きに関して、その真相は知らなかったという主張も嘘ではないと思われる。

この事件のもっとも大きな問題は、あくまで土地の値段が8億円値引きされたこと。少なくとも大阪音楽大学に売っていれば7億円で売れたはず。そこに政治家への働きかけが多かった籠池氏に売却が決まったこと自体が大きな問題。籠池氏がいくら小学校教育に情熱があったとしても、学校経営がそんなに儲かる商売でないのは明らか。土地と建物合わせれば20億円もの金額が必要であり、いくら政治家の働き掛けがあっても、債務超過のような学校法人に売れるわけ長いのは自明。にもかかわらず設立認可が下りたのは、松井知事と首相夫人の関わりなくして考えられない。亡くなった赤木氏は、籠池氏の尋常ならざる人格と行動に若干触れていますが、それを跳ね返せなかったのは、あくまで役所の問題である。なぜなら、籠池氏の政治家や昭江夫人への働きかけに関しては、なんら法律に触れることのない陳情でしかない。

森友問題が、籠池氏の補助金詐欺に矮小化されてしまい、本質である違法な値引きをしたこと、及び公文書を改竄・隠蔽したことに関して、検察がなんら捜査することなく不起訴とし、政府=安倍政権の責任が問わなれなかったことが最大の核心である。本書でも触れられていますが、大阪地検は立件に向けて動いていたが、時の法務事務次官であった黒川弘務氏が政権の意向を受けて不起訴にするべく動いたとの記述があります。それを受け入れた当時の大阪地検特捜部長は、すぐに検事正として転任していったとのこと。こうした人事を聞くと、やはり検察は政権の意向に逆らえない組織であると断じざるを得ない。

森友事件での被害者は、公文書改竄を命じられ、責任を感じて自殺した赤木氏と、国策捜査によりすべてを失い、実刑判決が確実な籠池夫妻になるのでしょう。

今日はこの辺で。