森友問題、公務員は真実を語れ

 森友問題で文書改竄を命じられた、当時の近畿財務局職員で自殺した故赤木俊夫氏の奥さんが、故人の遺書と手記を公表し、財務省と当時理財局長であった佐川宣寿氏を損害賠償で提訴しました。誠に勇気ある行動であり、是非とも大組織と戦ってほしいと思います。
請求額を1億1200万円と高額にしたのは、少額にした場合は国が簡単に認諾する可能性があるためで、あくまでも真相解明を求めたいという趣旨での提訴とのこと。
(ちなみに、役人が国を提訴した例として、郵便不正で冤罪が晴れた村木厚子さんが国家賠償請求訴訟で3,770万円請求し、国は争わずに全額認めた事例があり、村木さんは後に、もっと高額の請求をすれば、訴訟で真実が明らかになったかもしれないと語っていました。)  
いずれにせよ、現在の司法自体が政権寄りで、国の大組織との戦いは極めて困難が伴うことは間違いありませんが、この訴訟を通して、改竄が行われた本当の理由が明らかになることを全国民が期待しています。
今回私も、財務省の調査報告書を読んでみました(財務省のHPで閲覧可能)。
今の世の中、企業で不祥事などがあると、社内調査などはお手盛りが必ずあり、世間から評価されないのが一般常識。したがって、第三者委員会が立ち上がって調査されるのが一般的。直近では関西電力の過剰贈答問題があり、最初の社内調査では業者への発注は適正に行われていたということでしたが、第三者委員会報告では発注に手心が加えられていたことを明記しています。
モリ・カケ・桜・定年延長など、政治の私物化が横行している現政権での内部調査結果を信じろと言われても、納得する人がどれだけいるでしょうか。しかもトップが麻生という財務省の調査が信じられる訳がありません。
調査報告書を読んでみると、全体的にトーンが甘いのがよくわかります。赤木さんが記しているような、改竄への怒りや反省が感じられません。赤木氏手記と財務省報告書を比較した中での私の感想は以下の通りです。

① この案件は政治家などの各種干渉が多かったため、交渉主体が本省であったことが明記されていない。
② 国会のしつこい質問への対応を局長が忌避したことが強調されているが、根本原因までの記載欠落。
③ 本省担当者の疲弊を強調するが、最も迷惑をこうむった現場である近畿財務局担当者への謝罪がない。(赤木氏はこのために犠牲になった)
④ 赤木氏等、現場の改竄への抵抗と反発に対して、本省と近畿財務局幹部との「伝達」「相談」とあるが、実際に
は本省の強い「指示」が行われていたはず。
⑤ 売却に至る応接記録の保存期間が1年未満文書で、契約完了後速やかに廃棄することがあたかも適正な処理であるような文言が並ぶが、こうした特殊取引ではむしろ廃棄してはならないという反省が見られない。
⑥ 決裁文書には政治家関与など特殊事項は本来書くべきでないというような姿勢がうかがえる。
⑦ 佐川局長以下改竄にかかわった役人の懲戒処分が甚だ甘く、お手盛りの印象をぬぐえない。
⑧ 組織のトップが何ら責任を取っていない(安倍、麻生)

ちなみにお手盛りの調査で懲戒処分を受けた幹部役人の、現在の役職は次の通りです。
・佐川元理財局長   :停職3か月  →(処分前に国税局長官)処分後辞職
・中尾理財局次長   :戒告     →横浜税関
・中村総務課長    :停職1か月  →駐イギリス公使
・富安国有財産企画課長:減給20%3か月→内閣官房内閣参事官
・田村国有財産審理室長:減給20%2か月→福岡財務支局理財部長
・太田前理財局長   :戒告     →主計局長
・美並近畿財務局長  :戒告     →東京国税局長

驚くべきことに、本省と近畿財務局トップはみんな栄転しています。これは何を意味するのか。みんな安倍を守る為に頑張ったキャリア官僚に対する論巧行賞人事の証明ではないか。これではあまりにも赤木氏が報われません。
赤木氏は日頃、「僕の契約相手は国民です」と友人に話されていたとのこと。これは憲法15条が定めた「公務員
は全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」という公務員の仕事の基本中の基本です。彼は憲法の実践者そのものだったからこそ、命令とは言え改竄に手を染めたという罪の意識にとらわれ、自ら責任をとったのです。 
森友問題に関わった政治家、公務員は赤木さんの訴えに真摯に答える責務があります。
調査報告書では「新たな事実が明らかになったら更に必要な対応を行う」旨記されているので、政府は第三者
よる再調査するべきであり、国会もまた追及を緩めずに、国政調査権を行使していかなければならない事案であります。