瀬畑源「公文書問題 日本の闇の核心」

瀬畑源著「公文書問題 日本の闇の核心」読了。著者は戦後の天皇制を研究されている大学の先生。最近の公文書にかかわる不祥事を列挙し、本書を著しました。

最近起こった政権疑惑である森友、加計学園問題、防衛相の日報問題は、いずれも公文書の隠蔽・廃棄・改竄などで問題が大きくなった。時間的に「桜を見る会」は本書に含まれていないが、こちらも1年未満文書ということで、参加者名簿が破棄されていたということで、公文書管理のずさんさを浮き彫りにしました。

一般に役所仕事は「文書主義」と言われ、ちょっとした打ち合わせでも必ず議事録を取って、所定の決裁を得ることとされる。しかしながら、そこに何らかの政治的あるいは私的・恣意的な思惑などが入ると、自分の責任問題にもつながりかねないため、廃棄したりする傾向がある。最近の疑惑は、すべて政治家がらみの疑惑があるため、官僚は何とか疑惑を隠そうとする行為に走り、結果的には疑惑が余計深まってしまうことになるパターンが続いている。

本来役所の仕事というのは、法律なり規則なりに縛られ、それを逸脱することは原則できないからこそ、国民から信頼を得るのですが、政高官低の状況では、逸脱したことを行わざるを得ない状況が出てきて、不祥事が明るみになったときは、嘘に嘘を重ねることになる醜態をさらすことになる。最近の疑惑はすべてこのパターン。

こうした事態を防ぐためにも、役人は毅然として法律・規則を盾に政治権力に立ち向かい、そのために文書を必ず残すことである。従って、森友問題における改竄前の決裁文書には、政治家や首相夫人の名前も書かれていて、大変重要な公文書である。

本書で書かれていますが、「公文書管理法」ができたのが、驚くことに福田康夫政権時代とのこと。福田さんは安倍首相の突然の降板で首相になった人で、地味ではありましたが、こうした立派な法律を作り、疑惑問題にも無縁の方で、今思うと1年で辞めてしまったのが残念です。極めて常識をわきまえた方だったのでしょう。

著者が危惧しているように、福田氏が尽力して作った公文書管理法が、安倍政権の疑惑事件のために役所が忖度し、より非公開的、廃棄がしやすい方向に移行しているように感じる。歴史的文書として、後世に残すという重大な意味を理解しない、今さえ良ければよいという政権では、日本の未来はまさに闇になってしまい、恐ろしいことです。

今日はこの辺で。