森友、加計という二つの事件を追った朝日新聞取材班著「権力の背信 森友・加計学園問題スクープの現場」読了。
両事件は安倍首相自身が政治の私物化を図ったのではないかと騒がれ、未だに尾を引いている重大疑惑問題。結局、森友の籠池夫妻の詐欺以外は法的に裁かれてはいないが、「権力は腐敗する」の格言通り、安倍政権の暗部がさらけ出された疑獄問題である。いずれも朝日新聞がスクープを連発し、朝日の意地を見せたが、記者たちの舞台裏などを交えながら、問題の本質に迫る本書。しかしながら、未だに両問題とも安倍政権を追い込めていないことには、我々以上に朝日新聞としても忸怩たる思いがあるはず。
400ページの大著を、各200ページを割いている。
まずは森友問題。自殺した近畿財務局の赤城さんが遺書で残したように、籠池氏という厄介な人間の無理筋の要望、そのバックにいた政治家や安倍首相婦人の存在など、複雑怪奇な事件だが、8億円の土地代値引きと文書改竄・隠ぺい問題が、検察でも不起訴となるお粗末。朝日記者を大量投入して特ダネを取った努力は称賛に値するが、真相解明には至っていないのが本当に残念である。
加計問題は、安倍首相の刎頸のお友達への便宜によって、行政が歪められたか否かが焦点の事件。やはり前川喜平元文科省事務次官の「あったものをなかったことにはできない」発言にインパクトが大きい。「現役時代になぜ抵抗しなかったのか」との批判はあるが、例え退職した後であっても簡単に言えるものではない。最も印象に残るのは、参考人として前川氏や首相補佐官の和泉氏などが呼ばれた国会質疑。嘘を言っていない人間の言葉には真実の響きがあり、隠そうとする人間の言葉には、「記憶がない、記録がない」の注釈が必ず付くこと。誰が見ても真実はどこにあるかが明白である。愛媛県文書が出てきて、柳瀬秘書官が参考人で呼ばれた時も同様。
両事件とも、公文書管理という、役所の仕事の根幹が歪められた事実が浮き彫りになった。特に森友では決裁文書が改竄され、それに抵抗した近畿財務局職員の赤木氏が自死したことには、多くの関わった人間がショックを受けたはずである。特に、国税庁長官に昇格していた佐川氏は、赤木氏自死報道の翌日に辞任している。当然、当時の局長として文書改竄を指示した立場で、職を続けることはできなかったはず。しかし、佐川氏以外の関係者は、皆出世している。本書で朝日社員から質問される中村総務課長は、高飛車な態度で応対し、イギリス公使に出世しているなど、首相を守った功労者扱いだ。
二つの疑獄事件では、結局安倍政権を追い込むことができず、逆に2017年末の選挙では、野党の分裂騒ぎもあり、与党が圧勝してしまう。
そして今は、河井夫妻の公職選挙法違反問題と桜を見る会の疑惑。政治状況は2017年と似ているのである。安倍首相は、頭の片隅にもないという一方、いつでも解散を考えているとも言う。国会を閉会し、世間の批判も収まるのを待って、2017年と同様の解散に打って出るのではないか、と私は思っている。安倍政権を追い込むには、検察が1.5億円の選挙資金を徹底的に追及し、野党は臨時国会を開いて、追及していくしかないと思うのですが。
今日はこの辺で。