前川喜平「面従腹背」

文科事務次官だった前川喜平氏著「面従腹背」読了。38年間の文科省での役人生活を振り返り、キャリア官僚なるがゆえに、時の政権の文科大臣に仕え、次第に教育行政が右傾化していくことの危機感を持って仕事をしていたことがよくわかります。

文科省(かつては文部省)は、官庁の中では発言力がないものの、教育と言う誰でも興味を持つ分野だけに、時の政権や大臣が何かをレガシーとして残したい分野なのでしょう。中教審や臨教審などの諮問機関に自分の考えを含ませた答申を出すように仕向け、それに従わざるを得ない(面従)官僚の苦悩と、しかし何らかの抵抗(復配)を示そうとする前川氏の葛藤がよくわかります。

巻末に2012年からの前川氏のTwitterが記載されていますが、2012年と言えば、まだ彼が現役官僚の頃。講演などでも安保法制反対の国会デモに参加した旨語っていますが、本当に昔から日本国憲法の掲げる国民主権、平和主義、個人の尊厳の精神が好きなことがわかります。

教育勅語の内容を学校で教えてもいいという閣議決定がなされましたが、下村大臣の時に、まさに面従腹背の気持ちで国会答弁したのは、本人にとっても忸怩たるものがあったでしょう。

それにしても、なぜ戦前回帰を望む人間が多いのか?そんなに天皇主権下の、戦争ばかりしていた、そして個人の尊厳が無視されていた時代への回帰を望むのか?戦前の方がはるかに凶悪犯罪も多かったし、人身売買のようなことも行われた時代です。

政治家は今の総理のような権力者のご機嫌伺いにならないで、もっと歴史を学んでほしいものです。

今日はこの辺で。