道尾秀介「向日葵の咲かない夏」

道尾秀介お得意の、読者を騙すテクニックを駆使したミステリー「向日葵の咲かない夏」読了。

登場人物は少なく、主人公の9歳ミチオ少年と同級生で、クラスでいじめにあって不登校気味のS君、担任の岩村先生、古瀬老人、ミチオの妹のミカ、あとはミチオの両親、S君の母親、刑事の二人ぐらい。

S君は母子家庭でクラスではいじめにあい、ついにはそのストレスで首つり自殺をする。ミチオ少年は、岩村先生に頼まれて、S君の家に書類を持っていくが、そこでS君が首をつっているのを発見。学校に戻り岩村先生に知らせて、事件が動き出す。ここからSFチックな香りが出てきて、ミチオの前にS君の生まれ変わりの蜘蛛が現れ、自分は岩村先生に殺されたから、事実を確かめてほしいとほのめかす。その後蜘蛛となったS君を瓶に入れて、二人三匹で探偵ごっこが始まる。一方で、古瀬爺さんが重要人物として登場し、S君の自殺はもしかしたら岩村先生の殺人ではないかと、それとなくミチオにほのめかす。すっかり殺人犯にされた岩村先生だが、児童の裸写真の趣味を持つことをミチオは確認するが、その後は登場することなく、ミチオ、蜘蛛のS君、古瀬爺さんの三つ巴の心理戦が続くことになる。近辺では犬猫が何匹も殺されており、S君の仕業なのか、それとも古瀬爺さんの仕業なのか?混とんとしてくるが、ミチオ少年はズバリ真相を突き止めるという結末。

ミチオの妹で3歳のミカも登場するが、実はミカもトカゲとなった生まれ変わり。ミチオは母親に言葉の虐待を受けているが、3年前にミチオのちょっとした冗談から母親が階段から落ちて流産。それ以来、母親はトカゲのミカを溺愛してミチオは言葉の虐待を受ける身。最後の方でやっとミカが生まれ変わりにトカゲであることが明かされる。

ミチオは最後にはその落とし前を付けるために家に放火までする。

ミステリーとして面白いことは間違いないのですが、人間を生まれ変わりの動物にしてしまうところには、若干飛躍がありすぎる思いもしないではない作品でありました。

今日はこの辺で。