大門剛明「罪火」

大門剛明氏の作品第二弾は「罪火」。罪火という言葉自体は造語のようで、ネットで辞書を引いても大門氏のこの作品や、これを原作にしたドラマの説明しか出てこない。この「罪火」が最終的にはキーワードとしてこの作品のどんでん返し的なストーリーを解くカギとして登場する。大門氏はよく考えたものですが、ある種無理な謎解きにも思えた次第。

主人公は小学校の校長で定年まじかで、二人のこの母でもある町村理絵と若宮忍という、少年時代に暴力で人を殺してしまった35歳の青年。

理絵はVOM(修復的司法)という犯罪被害者遺族と加害者の関係を修復する仲介役をボランティアで行っており、教え子でもある若宮が過去に犯した罪を反省して、心から謝罪したいと思っていると信じ、被害者遺族に会うが、なかなか対面は難しいことを思い知る。そんな若宮は理絵の娘、花歩から特別な感情を寄せられていることを告白され、それにもかかわらず学校の担任の先生と仲良さそうに一緒にいたところを目撃し、激高し殺害する。この殺人事件の犯人は若宮なのだが、担任が姦淫した証拠があり、担任が逮捕され無期懲役の罰を受ける。しかし担任は殺していないことを訴えていることを知った理絵は、若宮が犯人ではないかと調査し始める。その結果、花歩の残した日記と手紙にある「罪火」という言葉を理絵が読み解いて、実は花歩が若宮の母親を火事で殺してしまった贖罪として若宮に近づいていたことが最終的に分かる。若宮は花歩の日記から、花歩が花火大会のあとに自首することを知って、花歩を殺したことを後悔。自分は悪を演じるしかないことを悟っていた。

花歩が若宮の母親の介護の手伝いをしていたこと、その母親が火事で死んでしまったことが相当前の方で書かれていることから、「罪火」とはもしかしたら火事で死なせたことではないかと思ってはいましたが、最後の局面は若干無理があるものの、大門氏が考え抜いたラストなのでしょう。

今日はこの辺で