窪美澄「よるのふくらみ」

「じっと手を見る」に続いて窪美澄さんの「よるのふくらみ」読了。本作も同じように「私」として出てくるのは保育士のみひろさん、みひろの中高の同級生だった祐太さん、祐太さんの兄でみひろと結婚前提に同棲した圭祐さんで、3人が二回ずつ、6篇の連作短編となっています。みひろの母はみひろが小学生の頃に若い男と出奔し、3年後に家に帰ってきた方で、みひろとはしょっちゅう喧嘩している仲。このみひろさんも母親と同じく性的に敏感で、自分も母親と同じなのでは?と時々感じる女性で、圭介と同棲してもセックスができないことに欲求不満を募らす。圭祐は自分が性的不能なのを承知しているが、子供さえできればと、みひろと妊活して、みひろは妊娠するが流産。圭祐に対して祐太は天真爛漫な性格で、みひろに思いを寄せるが、兄が結婚するというので諦め、子持ちのシングルマザーと結婚してもいいかと思っている男。そんな3人の心理描写や性描写、周りの人間関係を綴った話が繰り広げられる。兄弟の間で揺れ動くみひろ、何とかみひろとの結婚を実現したいが身体がゆうことを聞かない圭祐、みひろとシングルマザーの間で揺れ動く祐太。結局はみひろは祐太と予定調和的に結びつき、圭祐は大阪転勤を機に心機一転して新しい生活を始める。みひろと祐太は、「じっと手を見る」の日奈と海斗とシチュエーションは同じで、おまけに「じっと手を見る」の宮澤さんが圭祐と同じ。窪さんの小説のカラーが見えてきました。

今日はこの辺で。