秋吉理香子「哀愁しんでれら」

秋吉さんが映画「哀愁しんでれら」を基に書下ろした同名の「哀愁しんでれら」を、冬季温泉旅行に携行し読了。映画は土屋太鳳と田中圭の主演で作られましたが、未鑑賞。映画を小説に焼き直すという珍しい手法でできた作品。

主人公の咲良は児童福祉士として虐待などの疑いのある家庭訪問など、ストレスの溜まる職務に就く女性。かつての同窓生恵美の家を訪れ、その幸せな家庭環境を見て羨む。自分は母親に逃げられた家庭に経済的にも精神的のも縛られる生活。更に恋人はバンドマンを夢見る生活力のない男。

そんな咲良が、ある夜、一人の酔っぱらった男が交通事故にあいそうな場面に遭遇し、男を助ける。助けた男はクリニックを経営する医師で、妻が浮気相手の男と交通事故で死に、一人娘と暮らす身。咲良と助けた男、孝太は急激に接近。孝太の娘カオリの押しもあり結婚。咲良は一躍シンデレラの座を射止める。ところが孝太はモンスターペアレント(モンペ)で、カオリは小学二年生にもかかわらず、大人びた悪い性格。そんな家庭に入ったがために、二人に苦しめられる咲良。カオリは学校で同級生を突き飛ばして殺しても平気でいるような児童で、そんな娘をモンペとなってかばう孝太。ついに咲良は家を出るが、孝太は彼女を追いかけ仲直り。咲良は結局自分がいられるところは孝太の家しかないことを悟り、自らがモンペと化し、カオリを守るために孝太と一緒にすごいことを敢行するのでした。

モンペがモンスターペアレントの略語とは知らなかったですが、まともな咲良がモンペに変身してしまう恐ろしさ。秋吉さんの「暗黒女子」に通じるようなお話でした。

今日はこの辺で。