秋吉理香子「サイレンス」

秋吉理香子さんの作品は初めて。お名前も全く知りませんでしたが、ミステリー界では、女性作家として活躍中のようで、まず手始めに「サイレンス」を読了。

主人公の深雪さんは、新潟県沖の架空の島、雪之島に生まれ、小さいころから美少女と謳われ、本人も小さな島を出て東京でアイドルになりたい夢を持っていた。そして中学生の時にアイドルコンテストの新潟県代表に決まるものの、保守的な良心に許可がもらえず断念。高校は新潟本土で過ごして猛勉強し、東京の大学に進学。大学時代もタレントを目指すがかなわず、小さな芸能プロダクションに就職し、アイドルのマネージャーとして暮らす身。そんな雪乃さんが俊亜貴という大手広告会社のエリートサラリーマンと出会い、付き合うようになるが、深雪さんが34歳、俊亜貴が38歳になるにもかかわらず、俊亜貴は結婚する気配がない。深雪さんは女友達から早く別れた方がいいとのアドバイスを受けるが、彼とは別れたくない思いが強く、最後の手段として、両親に会ってほしいと懇願し、彼もなくなく了解し、正月休みに島に出向く。島は過疎が進む中、親族や島民全体の結束が強く、特に幼馴染でまだ独身の達也は島おこしで頑張っている。深雪は俊亜貴が何とか両親に気に入られるように仕向けるが、父親はそっけない態度で対応。俊亜貴が借金をしていることがばれた時も、深雪は何とか言いつくろういじらしさを見せる。34歳になったものの、その美貌は健在で、そんな深雪が変な男とくっついて不幸になるのは許せないという島民の気持ちが深雪にもわかるのだが、それでも俊亜貴に未練がある姿は、もどかしい限り。

そしてSNSに俊亜貴と深雪が担当するアイドルがキスしている写真が拡散し、俊亜貴は早朝こっそり島からの脱出を図る。深雪も後を追うが、吹雪で道に迷いフェリーに乗れず、達也に助けられて実家に戻る。その後海が荒れて数日間フェリーが動かず、ついに深雪は島に残り達也と結婚。一女をもうけ二人目がお腹の中にいるまで時が過ぎる。

達也の島おこしの雪室アイデアは順調に実現してゆき、島も活気づく。

さて「サイレンス」がやってくる。深雪は雪室の雪が解けてきたところで、俊亜貴が持っていた携帯を発見。一瞬恐怖におののく。俊亜貴とは彼が島を去ってから一度もあってないが、その消息は聞いていない。俊亜貴は実は雪室の下に埋められていたのだ。それを実行したのは達也やほかの島民ではないか?間違いない。でも深雪は俊亜貴と別れて今の幸せがある。サイレンスを決め込み、何もなかったように帰省した達也の妹に接する。その妹も今、かなり年上の男と同棲中で、司法試験に落ち続けているとのこと。その男も同じ運命をたどるのではないか・・・という余韻を残して終了。

深雪さんという魅力的な女性に甘えっぱなしで、時には金をちょろまかす男を、島、ひいては社会が許さないことを教えられました。

今日はこの辺で。