永井紗耶子「大奥づとめ」

木挽町のあだうち」で直木賞を受賞し、時代物小説の売れっ子躍り出た永井紗耶子ですが、すでにその前から読み応えのある作品をたくさん書いています。その中でも飛び切り面白い作品が本作「大奥づとめ」。

本作は大奥づとめをした五人の女性の大奥での生活を描く連作短編形式となっており、個性的な女性たちの姿が生き生きと描かれます。それぞれのストーリーは省略させてもらい、ここでは大奥のお勉強。まず、大奥にも歴としたヒエラルキーが存在し、御台様=将軍の正妻を頂点に、お年寄=重役陣、御中臈=将軍に呼ばれてお手付き(体の関係を持つ)した女性、各部署の女中さんなどの順。中でもお手つきされ子供を産んだ女性は特に重視され、男児が跡継ぎになる可能性もある。そうなれば一族安泰で、女中たちも何とか将軍の目に留まりたいと頑張る人もいるよし。大奥というと何か華々しい世界と思われますが、1000人もの女性が住む大奥は、最早ちょっとした町のような存在。そこには食事を作る仲居、文書をつかさどる祐筆の間、衣服=着物を扱う呉服の間、諸々の雑用を扱う御三の間、予算などお金に関わる折衝を行う表使など、いくつかの役職があり、その中にも序列がある社会。中臈となるものの、その後将軍から及びのかからない女性は猫の相手をして過ごす寂しい生活も待っている。なお、本作の時代の将軍は徳川斉昭で、40人の中臈がおり、中臈がいればお付きの女中さんが何人かおり、大奥が膨れ上がったと言われます。

時代小説を書くにあたっては、全く架空のことも書けないだけに、時代考証など、かなり調べ物が必要なので、大変な作業と思われますが、永井さんはじめ時代小説を書かれる方のご苦労を察するとともに、読む方は勉強させてもらいました。

今日はこの辺で。