中山七里「越境刑事」

多作の中山先生が、中国の新疆ウイグルでの民族浄化、人権侵害にまで“越境”して描いた「越境刑事」読了。架空の国や民族ではなく、明確に実名でこれだけはっきり描いているのは驚きで、習近平が読んだら頭に血が上るほど怒り狂うのではないか、日中の外交にも影響するのではないかと心配してしまう作品。

中山作品の常連でもある千葉県警の“アマゾネス”こと、高頭冴子を主人公に、日本国内で中国のウイグル政策を批判している人を拉致したり殺したりしている中国公安部の3人が、高頭に助けを求めていたウイグルの女性を中国に拉致されたことから、国境を越えて彼女を助けに行くことを刑事部長に直訴し、1週間の期限付きで許可をもらい、部下の郡山と二人で現地に向かい、中国公安部の3人とバトルを繰り広げ、最終的には目的を果たして帰国する物語。壮大なスケールではあるが、ウイグル地区からの車での逃亡が、いきなり広州に行ってしまうような雑な描写があるのは如何なものか。

習近平を神様のごとくあがめ、ウイグル族への迫害のひどさをこれでもかというほどに描いたプロパガンダ作品にも読めました。

今日はこの辺で。