中山七里「逃亡刑事」

中山七里先生が、千葉県警の剛腕女刑事、高頭冴子を主人公にして描くアクション小説、「逃亡刑事」読了。33歳ながら警部で捜査一課の班長を務める、まさに「アマゾネス刑事」と呼ばれる冴子刑事が、警察内の不祥事を暴き、最後には県警本部長をも追い詰める痛快アクション。ほとんどミステリー要素はないものの、危機一髪場面がたくさん出てきて、飽きることがないお話。県警内の縦割り組織意識から、組織暴力課と捜査一課が敵対することもあるのでしょうが、本作はまさに組対と一課の戦い要素もありますが、女刑事と組対課長との命をかけた戦いが、8歳の小学生目撃者を絡ませて進みます。最後は正義である高頭冴子刑事の一本勝ちという痛快さを味わえましたが、県警という組織に不祥事が発生したならば、組織の締め付けが激しく、冴子刑事は生き残れるのかどうか。

過去には、桶川事件の埼玉県警、日産社員虐待事件の栃木県警、裏金事件の北海道警、松本サリン事件の長野県警等々、警察不祥事が数多くありましたが、なかなか警察は正直には謝罪しない組織。できれば事件を隠蔽してしまいたい本音が見え見えでしたが、悪いことは悪いとけじめをつける組織であってほしいものです。

なお、中山先生はほとんど実在に地名や名称を堂々と使うのですが、本作で冴子刑事が身を隠す大阪の地名を、A地区と表現しています。西成区という地名は出てきますので、そこがあいりん地区なのは自明なのですが、なぜかA地区という匿名表現。なあ山先生らしくないのですが、何かクレームがあったのか?

今日はこの辺で。