映画「波紋」

「淵に立つ」で魅力的な主役をはり、「よこがお」でも怪しい魅力を放った筒井真理子さんが、三度の主役となった映画「波紋」を武蔵野館で鑑賞。現在62歳とは思えない若さと美しさを放つ彼女ですが、今回の役柄は悲喜劇の中で表情を変えていく演技がなかなか見事です。

彼女は、義父の介護をかいがいしく行う普通の専業主婦。介護をしていても、夫や息子は何も手伝おうとしない風景が映し出される。そんな彼女を襲う悲劇は、3.11大震災直後に突然夫が家を出て行方知らずとなる。なぜ出て行ったのかの説明はなく、この映画ではその必要がなかったと監督が判断したのでしょう。突然の夫の失踪という悲劇が、彼女をある宗教に入信してしまう切っ掛けとなり、その宗教に相当なお金をつぎ込んでいるのが伺える描写。統一教会問題が出てから作られたのか否かは不明ですが、大いに怪しい宗教の姿も垣間見える設定。介護していた義父が亡くなって生命保険が入ったので、それを充当したことも伺えます。そして第二の悲劇は、失踪した夫が突然帰ってきて、自分はがんであるから家にいさせてくれと、ずうずうしく居座る。彼女のストレスは夫との生活で頂点に達し、いよいよ宗教にのめりこむ。その宗教は、夫に許しを与えなさいと諭し、一方では勤めるスーパーの年配女性からは追い出せとはっぱをかけられる。どちらにしたらよいか、いよいよストレスは溜まる一方。夫とのやり取りや宗教施設でのやり取りなど、笑わせる場面も多く、正に悲喜劇が展開されるが、中心にいるのは彼女。最後は夫が亡くなり、夫からも宗教からも解放され、生き生きとしても和服の喪服を着てフラメンコを踊る筒井真理子さんの姿が印象的でした。

今日はこの辺で。