瀬尾まいこ作品9作目は「戸村飯店100連発」
大阪の下町で中華料理店「戸村飯店」を営む両親の二人の年子の息子、兄ヘイスケと弟ケイスケ兄弟を主人公とした青春物語を六つの章立てで交互に描く構成。
兄のヘイスケは、女子生徒にもてる二枚目ながら、コミュニケーションをとるのが苦手なようで、一刻も早く家を出て暮らしたいとずっと思っていて、それを実行するため自分で東京の専門学校を探し、小説を書くための学校に入学。但し、最初からその学校に通う予定はなく、1カ月で退学し、レストランのバイトで一人暮らしを続ける。そんな彼にも学校で一人親友ができ、更には学校の講師であった年上の女性から誘われて付き合うようにもなる。そんなヘイスケが1年間の東京暮らしを続ける中で、自分の進むべき道を見極めて、ついには最も嫌っていた実家の中華料理店を継ごうと決心する。
これに対して弟のケイスケは、ガタイは大きくお調子者で、高校3年生のクラスで人気者。合唱大会の指揮者を自薦してやったり、お店のお客からも受けがよく、店の手伝いを積極的にやる。そして自分は中華料理店を継ぐものと勝手に思い込うのだが、父親からは「おまえも一人暮らしをしろ」と怒鳴られる。ケイスケは、元々兄とはほとんど会話もしなかったが、進路に迷い、東京の兄を尋ねる。そこで兄のアドバイスを受けて大学入試のために猛勉強し、関東の大学に入学することに。
二人にまつわるエピソードがいくつも織り交ぜられているのですが、瀬尾さんらしく、なんだかんだ言ってみんないい人ばかりが登場し、二人の兄弟を見守ってくれる温かさがあり、ほっとする。ヘイスケが専門学校で出会う宮嶋さん、ケイスケの高校3年時の同級生の北島君なんかは、一生の親友になりそう。
二人の進路はある時全く逆回転するところが「100連発」を意味するのかは「?」ですが、楽しく人情味のある作品でありました。
今日はこの辺で。