瀬尾まいこ「おしまいデート」

瀬尾まいこさんの短編5編が収録されている「おしまいデート」読了。表題作を始め5編いずれも、男女カップルとは問わない「デート」にまつわるお話。こういう短編も面白い構成ではあります。

「おしまいデート」:すい子さんは両親が離婚してお母さんと暮らす身。最初は父親と定期的に会っていたが、父親が再婚後は父方のおじいちゃんと会うことになる。この日はおじいちゃんの軽四輪で岬までデート。でも、この日がおじいちゃんとの最後のデート。実は母親も再婚することになり、新しい父親とその息子の実君が家族になる。おじいちゃんと別れると雨が降ってきて、そこに実君が傘をもって迎えに来てくれていた。仲の良い家族ができそうな余韻。

「ランクアップ丼」:三好君は母子家庭で、高校時代は若干ぐれていて、ある日同級生と喧嘩して相手を殴ったため担任の先生に説教を食らう。それを見ていた隣のクラスの上じいと呼ばれる年配の先生が三好君を食事に誘う。上じいは三好君が腹を空かせていることを見抜いていて誘ったのだ。二人で行きつけのうどん屋に行き、卵丼を食べる。特に説教を言われるわけではなく、卵丼を食べるだけ。以後定期的に三好君は上じいから卵丼をおごってもらう。卒業して就職してからは、逆に給料日に三好君が上じいに卵丼を奢ることが習慣化。約2年が過ぎて奢り奢られが同じ回数になった日、いつもの通りうどん屋で待っていると、上じいがなかなか来ず、代わりに娘さんが来て、上じいが亡くなったことを知る。三好君は動転するが、上じいに代わって娘さんと天丼を食べる。

「ファーストラブ」:野球部所属で体育会系の広田君が、突然お調子者系の宝田君からデートに誘われる。気持ち悪いと断るが約束の時間と場所で待っていると一方的に言われ別れる。迷った挙句約束通り行き、二人で映画を見たり、宝田が造ってきたお弁当をベンチで食べたり、バッティングセンターで遊んだりして打ち解ける。翌日学校に行くと、宝田君は転校することがわかり、広田君は何か喪失感を味わうのでありました。

「ドッグシェア」:私はバツイチの30代女性で、いつも帰宅途中の公園の出口にいる犬をかわいがっている。そこにある日から中華料理が置かれるようになり、誰が置いているのかを待ち伏せすると、若い青年がいつも置いていた。二人は会話するうちに、犬をシェアしようということになる。そんな日が続くうちに犬は高齢で亡くなってしまう。二人の接点は年齢差から言ってこれで終わりになるのか否かはご想像に任せるというエンド。

「デートまでの道のり」:私は保育園で働く保育士。カンチャンという子がいる5歳時のクラスを受け持つが、カンチャンのお父さんに一目ぼれし、二人は結婚寸前。しかし、カンチャンが私になつかない状態を危惧してふん切れない日々が続く。カンチャンが風邪をひいたのでお見舞いに行っても、顔をそむけてしまう始末。保育園でお遊戯を無理やりやらせてカンチャンは抵抗するが、そのうちカンチャンが私に、お遊戯がうまく出来たらお父さんと3人で公園に遊びに行こうと言ってくれるのでした。

以上5編の変わったデートの形を盛り込んで、そこには死による別れ、幸せが待つ別れ、転校による別れなど、様々な別れも盛り込んだ意味深な作品群でした。

今日はこの辺で。