瀬尾まいこ「あと少し、もう少し」

週刊文春で人気作家、池井戸潤氏が「俺たちの箱根駅伝」という小説を連載中ですが、単行本化が楽しみです。そんな駅伝を扱った瀬尾まいこさん作品「あと少し、もう少し」読了。市野中学校は地方の小さな公立中学校。そんな市野中学校が駅伝の県大会出場を目指して地区大会6位以内を目標に頑張る姿を描きます。メンバーは6人で一人3km、計18kmを走るレース。本来は陸上部でメンバーが全て揃えばよいのですが、陸上部からは3人しか走ることができず、3人を誘い込んで挑戦しなければならない状況。昨年までは熱心な顧問の先生が作戦や人選を全て行っていて、小さい学校ながら18年連続県大会出場を遂げていたが、その先生が他行へ異動し、新たな顧問は美術担当の女性の先生。このため、陸上部部長の桝田君が全てを担わなければならないという大きなプレッシャーが生まれてしまう。そんなこともあって、桝田君の調子が上がらず、地区予選突破が難しい状況の中、物語は1区~6区という形でそれぞれの区を走る生徒を主人公に話が展開。

簡単に概略を述べると、

1区走者:設楽君。彼は桝田君に誘われて陸上部に入部し、3年間一緒に走ってきた生徒。実力はあるのだが、それを発揮できずに桝田君に励まされてきた人。でも、人間観察力は優れ、桝田君をバックアップしている。

2区走者:太田君。彼はいわゆる不良生徒だが、走るのは得意な人間。桝田君が一生懸命に説得して駅伝参加を決める。だが前日の壮行会では切れまくり、参加しないのではないかと思われたが、顧問の上原先生が説得して参加。本当は走ることが楽しくてしょうがない生徒。

3区走者:ジロー。ジローは勿論呼称だが、誰もが親しみを持ってジローと呼ぶ。ジローは頼まれたらなんでも引き受ける男で、皆から親しまれている。さすがに他にもっと走れる人がいるだろうと担任の先生に断るが、結局参加する。彼が入ったことで全体の雰囲気が盛り上がる、いわばムードメーカー。

4区走者:渡部君。彼は吹奏楽部に所属しサックスをいつも吹いている、気難しい男。勿論桝田の誘いを断るが、2年生で5区走者でもある俊介と一緒に説得して、最後は上原先生が参加を承諾させる。

5区走者:俊介君。唯一の2年生で、桝田を尊敬以上に敬愛し、桝田の言う通りの陸上部生活を送ってきた。桝田が調子悪い中、ぐんぐん実力が上がって、大黒柱になりつつある。

6区走者:桝田君。走る順番を今回は桝田君が決め、アンカーを俊介としたが、当日に上原先生が桝田君に変更。桝田君がいかに上原先生の頼りなさに失望し、自分が全て仕切らなければならないというプレッシャーを抱えたことから、スポーツ性貧血にかかっていたことがわかる。そんな中、上原先生からアンカーを交代すると言われ動転するが、上原先生が実はすごくいい顧問の役割を果たしていたことを悟る。

こうして、ランナーと上原先生が頑張ったことで、何とか地区予選突破を勝ち取るのでありました。

悪い人は誰一人登場しない、清々しい青春小説でありました。

今日はこの辺で。