瀬尾さんの作品8作目は「君が夏を走らせる」。偶然ですが、中学生の駅伝を扱った「あと少し、もう少し」に出てきた、不良少年ながら走ることが好きで、駅伝を走り切って県大会出場を果たした一員である大田君が主人公で、何か続編を読むような感覚。大田君は駅伝で走る喜びや仲間とのチームワークの喜びを味わったことから、その後猛勉強して高校受験を目指したが、第一志望校には受からず、落ちこぼれだらけの高校に進学。最初は陸上部に期待をもって入部したが、ほとんど部員は部活に出てくることなく、大田君も絶望。今は高校2年生、16歳だが、結局中学駅伝の前の生活に戻ったような生活を送ることに。。そんな大田君に、3歳年上の先輩から、妻が出産で入院することから、1歳9カ月になる娘、鈴香の子守をアルバイトでしてほしいと頼まれる。勿論そんな小さい子供の面倒などしたこともなく、何かあったら大変だと断るが、先輩は大田君を信頼しているからと、強引に頼みこみ、止むを得ず引き受けることに。最初は鈴香が泣き叫ぶだけで苦労したが、奥さんの言う通り3日で泣くこともなくなり、次第に鈴香と過ごす生活を楽しむように。彼は母子家庭で育ち、母親が一日中朝から晩まで働いていることから、料理の腕前はなかなかのもの。鈴香に美味しいものを食べさせようと、チャーハンから始まり、ハンバーグやおにぎりなど、美味しいものを昼ご飯で作り、鈴香は喜んで食べ、大田君にもなついてくる。まだ幼いため言葉の意味が分からない場面が多く、幼児言葉がたくさん出てきて、それを大田君が理解していく場面など、読んでいて思わず笑ってしまう面白さ。公園に行って喜ぶ子供や、そこにいるお母さんたちも親切な人ばかり。公園では、中学駅伝顧問の上原先生を見かけて、今の自分を見せたくないと、途中で帰ってくる場面もあるが、二回目では上原先生に声をかけられ、一緒に走ろうと誘われ、3000メートルを走る場面など、「あと少し、もう少し」を彷彿とさせる。
そんな大田君と鈴鹿との触れ合いもあと少しで終わり。大田君は鈴香の面倒をみたことから、今の自分の学校生活や将来のことなど、たくさんのことを学び、新たな高校生活が始まることを予感させるラストでした。
鈴香の描写が読者にも手に取るように伝わるかわいらしさがあり、大変楽しませてもらいました。
瀬尾さんの今後の作品に中学駅伝メンバーが既に出ているのか、これから出てくるのか分かりませんが期待するのと、大田君には一流の料理人を目指す姿を描く作品を期待します。
今日はこの辺で。
