中山七里「鑑定人 氏家京太郎」

中山七里先生が、また新たなキャラクターを創作して主人公に据えた作品「鑑定人 氏家京太郎」読了。

まずジャブとして出てくるエピソードは遺言書の鑑定。ここで氏家は鮮やかに文字鑑定の奥技を発揮して遺言書が偽物と鑑定。氏家がなんでも鑑定するというエピソード。

本作の主たる事件は「連続女性猟奇殺人事件」。連続して3人の若い女性が絞殺され、死姦し、更には鋭利な刃物で子宮が抜き取られるという連続殺人事件が発生。身体の切り口から、手術になれた人間として医師が容疑者として捕まる。但し容疑者は、最初の2件は自供するものの、最後の事件は自分ではないと主張。しかし検察は科捜研のDNA鑑定を根拠に3件とも同一犯であるとして起訴。犯人は弁護士を指定し、その弁護士と契約している民間の鑑定所「氏家鑑定センター」に証拠収集と鑑定を依頼。氏家京太郎は、かつて科捜研にいたが、そこでのとある事件でのわだかまりから退職し、自分で鑑定所を開設。科捜研の人間など何人かが入社して、冒頭の文字鑑定をはじめ、DNA鑑定など、鑑定の対象となるものすべてに対応した人材をそろえた優秀な鑑定事務所である。

氏家は容疑者の言葉に嘘はないとみて、DNA鑑定がどのように行われたかの鑑定報告書がないこと、事件の証拠試料がすべて廃棄されていることなどから、科捜研に疑惑を抱く。そして、2件目、3件目の事件の司法解剖をした鑑定医に資料を借りるなどして、DNAが違っていることを解明する。ここでは、中山作品におなじみの浦和医大の光崎教授も登場し、氏家に協力してくれる。

ついには、かつて科捜研で氏家のライバルであり、科捜研を辞める原因にもなった黒木の息子の犯行と判明し、黒木がそれを隠蔽するため、DNA鑑定に工作したことも突き止める。本作の途中で犯人はほぼ予想がつくヒントがある。3件目の事件の被害者が千葉医大医学生で、黒木の息子も千葉医大の医学部に入学していることが、ちょっとしたエピソードで語られる。氏家自身が科捜研の現役のころからその息子を知っており、二人が話す場面で千葉医大に入学したとの話が出てくるのだ。これで恐らく半分ぐらいの読者は気づくかもしれない。被害者が妊娠していたという事実が語られるときには80%の人が特定できるのではないかと思った次第。

「鑑定人氏家京太郎」も恐らくシリーズ化されるのではないかと期待を込めて予想しました。

今日はこの辺で。