下村敦史「コープス・ハント」

下村敦史作品「コープス・ハント」を速攻で読了。速攻とはかなりの飛ばし読み的意味合い。

「コープス」とは死体という意味。したがって作品名を日本語的に訳せば「死体探し」。

連続主婦殺しの最後の標的となってしまった若い女性が「夫から殺しを依頼された」と言われて、無残にも殺害される。犯人は捕まって、8名の殺害犯として死刑を宣告されるが、判決言い渡しの場で、「最後の女性殺害は犯人ではなく、真犯人は自分が殺して埋めた」と叫ぶ。この法廷での犯人の言葉がSNSで拡散し、遺体探しがSNS上で始まっていく。

最後の女性殺害に関わった女性刑事、望美さんは、捜査段階から違い犯人を追っていたため、この言葉を信じて単独捜査を始める。

一方、ユーチューバーとしてSNS上で知り合った少年3人も、再生回数の増加を狙ってこの遺体探しを題材にすべく、千葉県の山奥まで死体探しに赴く。この少年たちが、どうして千葉県の山奥に死体が埋められているのかといった会話がないのはちょっとずるいところ。種明かしは最後の方にあるのだが。

本作は、望美刑事の危険な単独捜査と、少年たちの死体探しが並行して語られ、その中でも最も緊迫するのは、望美刑事が男3人に拉致され、工場のようなところで奇跡的に逃げ切る場面と、少年たちが死体のありかを発見して死体を掘り起こす前後の場面。望美刑事の逃亡場面は手に汗握る緊迫感があり、下村の真骨頂だが、少年たちの死体発掘場面では、初めて少年の一人が死体を埋めた犯人であることが分かり、その動機が明かされる。

そしてやっと気づくのが、この二つのストーリーには時間差があること。少年たちの死体探しは5年ぐらい前の話で、少年の一人が猟奇殺人犯であったこと。望美は刑事は、ついにその全貌を刑務所での犯人との面会で明らかにすることになる。

けっきょく、犯人の母親の潔癖症的性格が少年時代の性格をゆがめ、女性との接触の方法を知らないまま、犯罪に走ってしまったという動機なのだが、下村作品としては期待外れな出来でありました。

今日はこの辺で。