裁判官時代に30件以上の無罪判決を行ったことで有名な木谷明氏の長時間インタビューをまとめた「無罪を見抜く 裁判官・木谷明の生き方」読了。
裁判官も検事も司法官僚と化してしまった現在の法曹界。そんな中にあって、30件以上の刑事裁判で無罪判決を出した稀有な裁判官である木谷明氏。父親が数々の有名囲碁棋士を育てた木谷實氏で、学校も東大法学部。本書の中に名前が出てくる先輩・同僚・後輩裁判官の肩書が最高裁長官や最高裁判事、高裁長官など錚々たる方達と仕事をしてこられ、その実績から言っても、高裁長官になってもおかしくない方だと思うのですが、司法官僚にとっては、検事に逆らって無罪判決を数々出したことで、最高裁事務総局から恨まれたのでしょう、水戸地裁所長が最高ポスト。彼のような無罪を見抜く力のある裁判官は屋はあり出世できなかったことが残念です。
本人は特に出世云々は語っていません。現場一筋の人生が好きであったことも事実なのでしょう。
それにしても、なぜ木谷裁判官のような勇気ある裁判官が少ないのか。否認事件にあっては徹底的に裁判官自らが調査もし、証人尋問も行い、真実を確かめることは当然なのですが、それをやっていないのが今の裁判所。ただ、数をこなせ、事件をためるなでは、裁判所の本来の役目は果たせないことはわかっているのでしょうが、どうせ一審で無罪にしても高裁、最高裁ではひっくり返されるのが常態となってしまった中では、やる気が起きないのか。
木谷明さんのような貴重な裁判官がいてこそ、冤罪者にとっては裁判所が最後のよりどころとなるはずが、司法官僚ではその希望は風前の灯火としか言いようがありません。
今日はこの辺で。