中山七里「ふたたび嗤う淑女」

中山先生の悪女シリーズ二作目、「ふたたび嗤う淑女」読了。前作では主役の悪女、蒲生美知留が、ラストの裁判場面で野々宮恭子に入れ替わり、あっと驚くどんでん返しが繰り広げられ、蒲生美知留はいずこかへ消えてしまった展開でした。野々宮恭子は罪を逃れたのですが、本作では野々宮恭子が主役で悪女を演じる展開?ながら、野々宮恭子は顧客となった5人に対して面会するものの、リーダー的に悪女らしくない描写。積極的に顧客に接するのは野々宮恭子のですともいうべき亜香里さん。その裏には何があるのか?

国会議員の柳井耕一郎に関係する男女が野々宮恭子の毒牙にかかっていく姿が描かれるのですが、箭内は極悪人としても、他の死んでいく面々は哀れとしか言いようがない末路。それぞれが自分の目標をかなえようと必死になっている中、それをまんまと利用して人生を破綻させることの快感を得ることこそが、悪女の面目躍如というべきと訴えている。

最初の犠牲者、藤沢優美さんは何とか柳井の秘書にステップアップしたいがために、金集めで騙され、新興宗教の副館長、伊能典膳も館長の椅子を狙う欲望から金集め豊作で騙され、柳井議員の後援会長の倉橋兵衛は、自分が都議会議員になる欲望をかなえるため、これまた金集めで騙される。柳井の政策秘書の咲田彩夏は、柳井の秘書と愛人でいることへの不満をうまく誘導されて、騙されてしまう。人間の欲望をうまく利用することで詐欺は成立し、騙されたものの末期は悲惨極まりないことを中山先生は描いていく。柳井が最後に復讐されるところは痛快ではあるが、果たして誰が悪女なのかがここで明かされる。

警視庁の麻生刑事と倉橋啓二も本作に出ては来るものの、悪女の正体がわからずじまい。次回作では悪女が捕まるのか否か?「嗤う淑女」の第三作はどんな展開が待っているのか?楽しみに待ちましょう。

今日はこの辺で。