朝日新聞社会部編「ひとりぼっちが怖かった」

裁判所の傍聴席に行くと、話題になった事件の場合は必ず記者席が設けられています。新聞社などの記者たちが、入社してまず配属されるのが警察担当で、その次が裁判所らしいですが、若い記者たちは記事になりそうな事件があると傍聴席に座り、ネタを拾うのがお仕事のようです。そうした若い記者が気になった裁判の記事を、朝日新聞デジタル版で今でも記事にしていますが、それを活字本にしたのが本書。第一弾は「いつも傍聴席にいます」で、本書は第二作目で、タイトルを「ひとりぼっちが怖かった」としています。

全部で30の事件を数ページでまとめている短編集のようなもの。本当の虐待事件から、介護疲れの無理心中まで、どこにもありそうな事件を30件載せていますが、いちばん多いのが、介護疲れによる殺人事件。どうして周りに相談しなかったのだろうと思う事件が多いのですが、人間追い詰められ、精神的におかしくなってくると、相談する余裕もなくなってくるのでしょう。被害者はもちろんかわいそうですが、被告となった加害者もまた、同情すべきところがたくさんあります。結果、裁判官もこうした介護やDV被害にあった被害者には、執行猶予判決を出している場合がほとんど。20歳以上も年が離れた女性と結婚し(当時女性が70歳)、90歳になるまで結婚生活を送り、介護疲れで女性を殺した人の事件もありましたが、そこまで面倒を見れるものかと感心させられました。同じような被告に同情すべき事件が多く、さすがに裁判官も実刑判決は出しにくいとみえて、執行猶予判決が目立ちます。それにしても、老人や障碍者介護のお問題は、ますます切実な問題となりつつあり、誰にも相談せずに思い悩んでいる人は、この世にたくさんいると思われます。公助が必要な時なのです。

今日はこの辺で。