横山秀夫「ノースライト」

寡作作家、横山秀夫6年ぶりに発刊した「ノースライト」読了。前作「64」は、がちがちの警察ものでしたが、本作はミステリーというよりはヒューマンストーリーと言った方がふさわしい作品。勿論、ミステリー要素もあることから、2019年の週刊文春ミステリー国内部門お第一位を獲得しています。週刊文春読者はよっぽど横山作品が好きなようで、「半落ち」、「クライマーズハイ」、「64」に続く4度目のベストワンとなっています。私が最近熱中している中山七里作品が、ベストテンん内にほとんど入っていないのも不思議な現象。

なお、本作は2004年から2006年にかけて雑誌「旅」に連載されたものを全面改稿した作品であり、単行本化にかなり時間がかかっていることが分かります。

主人公はバブル経済崩壊ですっかり仕事がなくなった建築士の青瀬。彼は妻とも離婚し酒におぼれていたが、大学時代の友人で設計事務所を経営する岡嶋に雇われ、何とか立ち直って子供の養育費を稼いで、月一で娘と会う日々を送る。そんな青瀬が、長野県の信濃追分に自宅を立ててほしいという顧客が現れ、「青瀬が住みたいような家を建ててほしい」だけの注文を出し、青瀬が設計し完成、その作品は雑誌でも紹介されるほどに個性的な設計で評価される。北からの光を取り入れた「ノースライト」の家が本作の標題となっている。この家を引き渡したものの、その後この家に顧客の吉野が住んでおらず空き家になっていること、吉野の行方が分からなくなっていることを知り、青瀬は吉野の行方を調べるというミステリーが始まる。この間、岡嶋が美術館の設計コンペの指名を受けるために役人を接待している疑惑や岡嶋の死、青瀬の生い立ちや父親の死、青瀬の離婚理由など、ヒューマンドラマが綴られ、430p近い作品のうち、最後の30ページですべてのミステリーが解き明かされる、収束する展開。吉野が何故青瀬に設計を頼んだかが最大のミステリーだが、その種明かしもそれほど違和感なく読める作品。但し、やはり本作はミステリーで読むのではなく、ヒューマンストーリーとして存在感があるのではないか。特に青瀬と別れた妻ゆかりさんとの関係は、ゆかりさんの何となく魅力的な人間性を描いており、興味深く読みました。

今日はこの辺で。