中山七里「さよならドビュッシー」

中山七里先生が2008年ごろに書いた長編第二作目で、かつ最高傑作ともいわれる「さよならドビュッシー」読了。中山先生の代表作だけあって、次がすぐ読みたくなる面白さが最後まで続く作品で、文庫410pも長さを感じさせない、メリハリのある作品。2008年度の「このミス」大賞に輝くだけの価値があります。

本の題名にもあるように、クラシック音楽のピアニストが主人公「私」が遭遇する災難と素晴らしいピアノの先生との出会い、私も大火傷を負った放火事件で二人がなくなり、更には私の母親までもが何者かに殺されるという殺人ミステリーがあることから、ミステリー小説に入るのですが、中山先生得意の音楽が一方の主役。「私」は大火傷を負うものの、素晴らしき岬先生に出会ったことから、ピアノを諦めずに、リハビリ特訓に励み、ぐんぐん上達してゆき、ついにはコンクールの代表に選ばれ、そのコンクールを目指して小説のフィナーレに向かって一直線に進んでいく。「私」の心理描写がピアノの鍵盤に合わせて語られる繊細さは、相当のクラシック通でなければ書けない描写。そんな「私」の心理描写がまた素晴らしく飽きさせない。三人が犠牲になるミステリーながら、ミステリー小説というよりも、音楽根性物語的要素が勝った作品ではあるが、最後の最後に用意された、あっと驚くどんでん返しには誰もが騙される。それを早々と気づいていた岬という準主役は、司法試験に合格するも、ピアニストを諦めきれず、軟調に悩まされながらも、一流のピアニストとして認められている贅沢な才能の持ち主。まだ読んでいないのですが、他の中山作品にも表れるキャラクターのようですが、魅力的極まりない。

ドビュッシーの音楽を聴きたくなる小説でありました。

今日はこの辺で。