中国新聞取材班「ばらまき」

中国新聞は広島に本社があり、ばらまきとくれば、政治に興味がある方ならすぐに気が付く河井夫妻選挙違反事件。この事件を地元新聞として恥ずかしくないように徹底的に調査報道を行った記録が本作「ばらまき」。

地元の地方議員や首長40人を含む100人に約3,000万円を見境なくばらまいて逮捕・有罪となり、克之氏が衆議院議員、案里氏が参議院議員を辞めた事件。克之氏はまだ刑務所に収監されている。

事件が発覚した端緒はウグイス嬢への水増し手当の支給を週刊文春が報道したことから。さすがに週刊文春というヒット。地検が捜査に入り、とんでもない証拠を見つける。誰にいくらといったことが記されている紙が押収物から出てきて、正にその通りにばらまかれていたことがわかる。更に案里氏の選挙資金として自民党本部から1億5,000万円が支給されていたことも発覚。一大スキャンダルとなる。

参院選広島選挙区は定数2に対し、自民党現職の溝手顕正と野党現職の森本真治、そこに自民党は2議席独占を狙って河井案里も立候補。溝手氏には1,500万円支給されたのに対し破格の10倍の資金で闘うことに。この資金を得たことによるプレッシャーもあったのか、選挙を取り仕切った案里氏の夫で衆議院議員の河井克之氏が3,000万円をばらまいたのだ。案里氏の選挙応援は金と自民党実力者が現地入りで総力を挙げての戦いとなり、結果は当選。溝手氏は落選の憂き目にあう。

1億5,000万円は誰が決めたのかは未だ闇の中だが、当時の安倍総裁が主導したのではないかともみられている。

検察は当初、収賄側の100名は全員不起訴としたが、検察審査会が起訴相当としたため起訴され、これから裁判が始まる。本書では河井夫妻と自民党本部、そして40人の議員や首長へのインタビューや証言などを細かく取材し掲載されている。首長や議員の一部は辞職したが、大多数は未だに居残っている。その図々しさは目に余るものがある。広島政界の恥以外の何物でもないのだが、裁判で厳しい判決を期待したいものである。

それにしても、自民党幹部のこの事件に対する発言は無責任極まりない。闇に葬りたい意図があるから、買収資金は官房機密費から出たのではないかなどの噂が未だに消えない。克之氏は安倍氏に重用され、菅氏にも非常に近い存在。官房機密費はありえないことでは決してないと私は推測する。

今日はこの辺で。