映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」

下高井戸シネマにてドキュメンタリー映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」鑑賞。

東大法学部を卒業し、志を持って総務省のキャリア官僚として入省したものの、省利省益、前例踏襲、OBが幅を利かす官僚の世界に嫌気がさし、一念発起、国会議員選挙に立候補し、ここでも党利党益が優先される政治の世界で何とか日本を良くしようとする政治家、小川淳也氏を追った政治ドキュメンタリー。ドキュメンタリーとしては出色の出来であり、ドラマ以上にドラマ性を感じさせるドキュメンタリーでした。

小川氏の選挙区は香川一区で、2003年、32歳の若さで衆議院選に挑むものの、地盤・看板・カバンのない中、民主党公認で出馬したものの、最初の挑戦は落選。2005年の衆議院選は選挙区では敗れたものの比例復活で、晴れて国会議員となる。しかし、ここで味わうのは、比例復活の肩身の狭さ。2009年の選挙では、政権選挙と呼ばれ民主党ブームで初めて選挙区当選。その後は2012年、2014年、2017年とも、比例復活当選。なぜ選挙区当選できないか?これは同じ選挙区に地盤・看板・カバンを持つ平井卓也氏がいるから。平井氏は現在デジタル改革担当大臣として入閣しているが、四国新聞西日本放送などを経営する四国の名門一族で、その牙城は盤石。特に前回2017年選挙では小池新党騒ぎに巻き込まれ、希望の党から立候補せざるを得ない状況下、小差の接戦を演じて比例復活したのは、むしろ称賛されるべきと思われる。

本作では、2017年選挙を中心に、大島監督が長年カメラで追い続けてきた小川氏の人となりや政治信念、家族や支援者の苦労を切実に描いており、政治家が地盤・看板・カバンがなく選挙を戦うのがいかに大変なことか、家族や両親、支援者がいかに大切かを最大限に印象付ける。

私自身、小川氏のような方が総理大臣になってほしい思いがあるのですが、今の二世・三世議員が何となく偉くなっていく政治状況は、彼のような逸材を殺しているとしか思えない。例えば、枝野立憲民主党党首を貶すわけではないが、小川氏のような人材を党首にして選挙を戦えば、議席増につながると思うのですが。

本作中で、小川氏自身が政治家には向いていないのではないかと思い悩む姿、家族みんなが政治家なんかやめてほしいと思っている姿は、胸が痛くなる思い。何とかこうした人材を活かしていく道はないのか?

「小川純也、君こそ総理大臣にふさわしい人材なのだ」と言ってあげたい。

今日はこの辺で。