清水潔「南京事件」を調査せよ

清水さんは、FOCUSで桶川ストーカー殺人事件を調査し、日本テレビに移籍してから足利事件を追い、その優れた調査報道が高く評価されてきたのですが、本書は日本でも諸説飛びかう「南京事件」の真実を追ったテレビ報道を書籍したもの。

南京大虐殺」は本当にあったのか、あるいは30万人と言われる犠牲者が出たのは本当なのかなど、事件の有無から虐殺人数の大小まで、日本では諸説が飛び交い、保守反動派はその存在までも否定していることは良く知られていることですが、事件があったのが1937年であり、清水氏の調査が2014年であるので、既に77年前の出来事でもあるので、実際に立ち会った人もごくごくわずかであり、記録も限られているがゆえに、桶川事件や足利事件のような、一種現在進行形的な取材は不可能で、数少ない生存者や記録に頼るほかには、調査のしようがないのが残念なところ。

事件に立ち会った日本人の発掘は特に困難ですが、小野賢二さんという市井の研究者の記録が大きな資料となりました。こうした貴重な研究者がいたことは幸運でもありました。

清水さんは、この小野さんの資料を基に南京事件の関係者を探し、彼らの発言を基に「南京事件は実際にあった」ことを報道し、更には一般にはあまり知られてはいない、「旅順虐殺事件」の存在も訴えます。

南京事件で何人が殺されたのかについては結論付けてはいませんが、少なくとも数万人は実際に虐殺した事実があり、南京事件はなかったという言説を否定する。

虐殺事件というのは、その数が重要なのではなく、あくまで無抵抗の兵士なり市民を、たとえ戦争の名を借りてでも許されないことを、加害者としての日本人は認めるべきでしょう。

それにしても、こうした残虐行為が敗戦とともに隠蔽され、生き証人も減っていく中で、ちゃんとした記録を残すことの重要性をつくづく感じる次第です。

今日はこの辺で。