緒方重威「公安検査」

2007年に朝鮮総連ビルが売却されるという問題が発生し、元公安調査庁長官が詐欺容疑で逮捕される事件があったが、その張本人である元公安調査庁長官で、仙台高検広島高検検事長も務めた緒方重威氏著「公安検察」読了。

この事件は、公安調査庁長官まで務めた検察幹部OBが関わっていたということで、当時大きな話題になりましたが、その本人が、なぜ事件に巻き込まれてしまったかを反省の意味も込めて描いた著作。検事長認証官であり、検事になっても皆が皆なれるものではない、幹部中の幹部。広島高検検事長を最後に63歳で定年退職した緒方氏が、その脇の甘さから、満井忠男というブローカーのような男と知り合い、満井の怪しい話に乗っかって、いくつかの事件の弁護や顧問的なことをして、更には満井に金を貸したりして、朝鮮総連ビル事件で決定的に破滅する姿は、哀れというしかない。

特に公安という仕事に情熱を燃やした検事が、なぜ易々と騙されてしまうのか、不思議でもありますが、本人曰く、ボンボン育ちで世間知らず、検察の世界にいても、人を見る目を養えなかったことを如実に表しています。緒方氏が主張するように、おそらくは本人に詐欺の自覚はなく、一種国策捜査であることは間違いないでしょうが、自業自得の結果でもあります。

定年時に8,000万円の退職金、退職後には10社近くの監査役や顧問に就任し、月収300万円の収入があり、何不自由のない第二の人生であったがために、余裕がありすぎて魔が差してしまったのか。

今日はこの辺で。