サイモン・シン「フェルマーの最終定理」

インド系イギリス人であるサイモン・シン氏は、物理学出身で、その後作家となった方で、数学をはじめ科学全般に知見があるようですが、この作品が話題になったことがよくわかります。

サイモン・シン著、青木薫氏訳「フェルマーの最終定理」を読了した感想です。よく数学は哲学だと言われますが、これを読んでいくと、ピタゴラス以来の数学者が如何に哲学的な人間だったかも想像されます。私自身は、数学の知識はほとんどないので、数論を語っている部分はななめ読みなのですが、フェルマーの最終定理が如何に数学者にとって、その解明が夢であり、壁であり、苦痛でもあったことがよく表現されています。

この本では、ただフェルマーの最終定理を語るだけではなく、ピタゴラスの偉大な業績であるピタゴラスの定理に代表される古代ギリシャ数学から始まり、ユークリッドニュートンなど偉大な数学者が登場し、彼らの足跡もたどりながら、フェルマーというアマチュア数学者が如何に天才であったか、あるいはその後に登場するオイラーなどの天才を語り、そしてこの本の最大の主役であるアンドリュー・ワイルズの執念の取り組みをハイライトに、いかにフェルマーの最終定理の証明が難しいかを存分に語ってくれています。この定理の証明の正しさを理解できる数学者が世界に10人といないということにも驚きです。

数式で最も美しいとされるオイラーの等式

e + 1 = 0」

も随分有名ですが、フェルマーの最終定理

xn + yn = zn 」 X・Y・Zは整数でnが2以外には存在しない

ピタゴラスの定理に期限を置く、単純な数式だからこそ、証明が難しいのでしょう。

フェルマーの最終定理証明にあたって、フェルマーが着目したのが、谷山・志村予想であり、岩澤理論や、他にも日本人数学者が出てくるのはうれしいです。日本人の数学者も優れていることは、昨年ABC予想を証明した望月新一先生の存在ひとつとってもわかりますが、更なる日本人数学者の活躍を期待します。

とにかく一読の価値ある作品でありました。

今日はこの辺で。