Netflixドキュメンタリー「ブラジル 消えゆく民主主義」

Netflixドキュメンタリー「ブラジル 消えゆく民主主義」視聴。ブラジルでは1985年まで軍事政権が続き、民主主義国としての地位が認められない状況でしたが、1985年にようやく文民大統領が誕生し、本格的に民主主義国としての第一歩を踏み出す。ただし、軍事政権時代からの慢性的な政治家の汚職、所得格差増大が続き、大都市には貧困街が存在する状況でした。そんな中誕生したのが労働者階級出身のルーラ大統領。庶民の絶大な人気を得て2003年に大統領に当選し、2010年までの丸8年間国家のリーダーとして貧困層への給付などによる貧困対策や汚職対策など、民主主義実現に貢献してきた。2011年には後任に女性のジルマ・ルセフを指名し、ルセフ氏が大統領に当選し、国のかじ取りをすることになります。これに対していわゆる守旧派や軍人勢力がルセフ氏やルーラ氏の汚職をでっちあげ、追い落としを図り、ついにはルセフ氏が弾劾で大統領の職を失うことになり、後任には連立を組んでいた政党の党首である副大統領のテメル氏が就き、更に2018年の大統領選では、現在のボルソナーロが大統領になります。

この過程を追ったドキュメンタリーが本作。日本から見れば地球の裏側の遠い国で、その国情については新聞で知る程度。サッカー王国であることや、カーニバルで盛り上がる国であることは誰でも知っていますが、なかなか政治体制等については不案内。

本作を見る限り、政治家で庶民のことを想って頑張っている人がどれだけいるのか、首を傾けてしまいます。国会議員等の為政者は、汚職が当たり前の世界で、自分たちにとって邪魔な存在は、犯罪をでっちあげてでも追い落とす。そのためにマスコミを利用して市民の扇動を煽り、それを信じてすぐに政権批判で街頭デモを行う市民。まさにカーニバル的な盛り上がりで、騙されているのを疑うこともしない市民たち。

本作では、あくまでルーラ氏とルセフ氏は善玉として描いており、真実はもっと別のところにあるのかもしれませんが、一つ言えるのは、マスコミがすべて資産家=守旧派が握っており、どうにでも情報操作ができるところに恐ろしさがあります。国民は一方的な情報しか耳にせず、また議員たちは汚職まみれとくれば、いくら潔白を訴えても結果は黒にしかなりません。

そして、今大統領なのがボルソナーリ氏。この方も元は軍人で、ルセフ氏を追い落とした仲間の一人。こうしたリーダーを持ったブラジル国民の悲劇は、今回のコロナ禍で現れています。新型コロナを「風邪のようなもの、国民の7割が感染すれば収まる、早く経済活動を再開せよ」などと無責任な言動を繰り返し、対策を求める保健大臣を罷免してしまいました。それでも支持率は58%もあるとのこと。現在の感染者は6万人強とのことですが、こちらも検査数は極めて少ないとのことで、大都市の貧困街にどれだけ蔓延しているか不明。ブラジル国民の悲劇は、こうした大統領を選んでしまった国民自身に振りかぶってくるのですが、自業自得では済まされない問題ではあります。

ちなみにアメリカのトランプの言動も同じで、感染者は世界で断トツ。ブラジルの感染数がアメリカを追いかけることは間違いないでしょう。

今日はこの辺で。