「緊急事態宣言」と憲法への「緊急事態条項」付加を見誤るな(その2)

前回、安倍政権の新型コロナへの対応ははなはだ心もとないものであることを記し、緊急事態宣言の使い方もよくわかっていないことを痛感します。

さて、特措法における緊急事態宣言においては、原則罰則付きの強制的な外出禁止や営業禁止などはありません。今世論的に盛り上がっているのは、「自粛要請するなら保障せよ」というものです。政府は保証をしたくないから強制しないという態度です。

一方で、「罰則付きで強制せよ」という声が次第に大きくなってきていることも事実です。国会答弁でも、警察の巡視活動はあくまでも呼びかけにすぎないとの答弁が続いてきましたが、昨日の西村担当大臣の答弁で初めて、「強制・罰則」という言葉が出てきました。今後さらに感染者が増えていけば、世論もその方向に向かうのではないかと危惧されるところです。そこに憲法への「緊急事態条項」付加論が与党を中心に出てくることが予想されるのです。

与党の「緊急事態条項」(案)は、言語的にはそんなにおどろおどろしいものではありませんが、基本は三権分立を脅かす、非常に危険なものです。国権の最高機関である国会の意思を無視して、内閣が勝手に政令を出して国民の私権を奪うことができてしまうものです。特に今の安倍政権のように、国会の意思に反する法律の解釈を勝手に変更してしまうような政権がこの条項を手にした時には、何をかいわんやです。

新型コロナという、今までなかった人類の新しい脅威に対しては、確かに国民すべての協力がなければ収束が遅れ、多数の死者が出てしまう、もっと言えば「明日は我が身」の恐怖がなくならないでしょう。しかし、これに乗じて危険な条項を憲法に加えようという動きには決して同乗してはならない覚悟が必要です。

そして、その同乗が国会で既に起きています。

衆参両院とも予算委員会が終わり、現在は各委員会が主戦場となっています。どの委員会も新型コロナ関係質疑が多いのですが、それは全省庁にかかわる問題であるので、当然のことであり、各会派、国会議員は、現在の政府の対策の悪い部分を追及し、改めさせる必要がありますし、政府はそれに答える義務があります。そんな中で、日本維新の会は、今の非常事態のなか、一般質疑をせずに、政府には対策に専念してもらいたい旨提案し、実際に与えられた時間の質疑を放棄している議員がいます。これは驚くべきことであり、自身の義務を放棄しているものであり、国会軽視そのものです。

維新の会のこうした行動こそ、緊急事態条項で安倍政権が目指す姿であります。国会の質疑は国民の負託を受けた議員の義務であり、国民の意見の反映でもあります。これを放棄することの意味を維新の会はわかっているのか?恐ろしい党です。

国家の非常事態が発生した場合には、すべて内閣に白紙委任し、内閣の思う通りのやりたい放題を許す道につながります。まさにナチスの支配を生んだドイツのと同じです。それを理解しない政党が、それなりの支持を受ける現状を憂うばかりです。

今日はこの辺で。