NHKスペシャル「大廃業時代~会社を看取(みと)るおくりびと~」

10月6日(日)放送のNHKスペシャル、「大廃業時代~会社を看取(みと)るおくりびと~」を見る。少子高齢化による市場の縮小は、今後の日本経済にとって大きなマイナス要因ですが、その一つの大きな問題が、企業の廃業問題です。

私はよく商工会議所や大学、新聞社などが主催する講演会、セミナー、シンポジウムに参加するのですが、経済・社会問題で一番多いのは、今年限りの消費増税対策を除くと、働き方改革関連と事業継承・廃業をテーマとしたもの。目の前に迫る、あるいは既に進行している問題ながら、根本対策がない重要課題です。

番組を見て驚くのは、全国120万社の中小企業のうち廃業の恐れがあるのが30万社。その経済的損失は、雇用喪失650万人、GDP現象22兆円という莫大な数字。

こうした状況から、今もっとも勢いのある会社はM&A関連の会社で、急激に業績を伸ばしています。ただし、彼らが狙うのはあくまでそれなりに利益が出ているか、あるいは将来性があるかのどちらか。それに当てはまらない会社は、結局廃業せざるを得ないというのが番組の結論と読み取れました。少なくとも負債が大きくならないうちに、早めに決断して自主廃業し、取引先や自分を傷つけない方向性を持つことが肝心とのメッセージ。

事業継承問題は、どちらかと言うと後継者になり手がいないことがクローズアップされますが、特に地方経済の疲弊は中小企業の経営を圧迫しています。私もよく旅行で地方に行くのですが、地方都市の駅前商店街のシャッター街化は目を覆うばかりで、疲弊を物語っています。地方創生という掛け声を聞いて久しいですが、その具体策がなかなか実現しないのは、やはり人口、特にお金を使う若い世代(結婚して子どものいる世帯)が少ないから。

戦後ずーっと日本の経済成長を支えてきた中小企業の廃業を食い止めるために、政府も税制優遇等で手は打っているものの、特効薬はありません。

番組中、印刷会社を4年前に娘さんが事業継承したものの、売り上げが減少し、会社の「おくりびと」のコンサルの助言に従い廃業を決断し、実行した事例を紹介していました。このケースは関係者への被害を最小限に抑えた事例ですが、それでも従業員10数人の雇用は奪われました。社長だった娘さんは、デパートの販売員としての一歩を踏み出していました。中小企業経営者と従業員の苦労を垣間見た思いでした。

今日はこの辺で。