朝鮮人強制連行と徴用工問題

韓国の最高裁判所における個人請求権容認判決以来、日韓関係は報復合戦で戦後最悪の関係となっています。そこで外村大氏著「朝鮮人強制連行」を読んでみました。

相当多くの資料を読み込んだり、インタビューなどした労作で、非常に客観的に書かれた著書となっています。日中戦争が1937年に始まり、日本は本格的な戦時体制となっていきますが、その中での大きな課題は軍人の増強と軍需産業及び関連産業従事者の増員でした。1938年には国家総動員法ができて、全国民総動員態勢が敷かれていきます。その中で当時日本の植民地であった朝鮮と台湾からも多くの労働力が動員されることになります。その過程で強制連行されて炭鉱などの劣悪な職場環境の中で労働を強いられた方たちが裁判提起したのか、現在問題になっている徴用工裁判問題です。

外村氏の著書では、1930年代から朝鮮から自らの意思で日本に職を求めてきた方ももちろんいたことを前提に、それでも太平洋戦争開戦後の日本政府の動員計画と、それに従わざるを得なかった朝鮮総督府、結果的に有無を言わせぬ、すなわちっ暴力的にでも日本に送り出された朝鮮の方が数十万人いたことは間違いがありません。そして、日本人が嫌がる劣悪環境中心の現場に贈られたのです。彼らは、日本人からは差別され、低賃金で働かされたのです。しかも基本的には単身で、家族を残してきており、残った家族もまた働き手をなくして貧困がさらに大きくなったとされます。

日本国内の政府の部署が、朝鮮の実態を何ら把握せずに、ただ日本人では要員が足りないからとの理由で数合わせの計画を作り、朝鮮総督府はこれに逆らえずに数合わせの強制連行を、朝鮮人の官吏にやらせたのです。

終戦を迎えて、当然に賃金不払いや過酷労働に対する賠償請求権利は存在するはずです。

ここで日本のマスコミがあまり注目して言わないのが、かつての日本政府の見解です。日韓請求権協定は、個人の請求権まで含めたものではない旨、答弁していた事実です。こうした答弁から、日本国内で韓国徴用工の方が裁判を起こしましたが、すべて否定はされました。しかし、同じ裁判を韓国で起こして、韓国の裁判所が認めても不思議ではありません。これは民-民の裁判です。日本政府が日本の民間企業を縛ることはできないはずです。現に中国人の三菱系企業に対する損害賠償については認めた経緯があります。

日本はただただ、日韓請求権協定で解決済みというだけではなく、もっと大人の対応ができないのか?韓国もま、国際司法裁判所の判断を仰ぐことも一つの選択肢であると思うのですが。

さて、もう一点あります。外村氏が冒頭述べていますが、今の日本の外国人労働者受け入れ政策です。これは当時の状況と似ているのです。今政府が行っているのは「一億総活躍社会」。これは当時の国家総動員法に告知しています。少子高齢化労働力人口が減る中、高齢者や女性労働力を総動員して、更に足りない分を外国人にたよろうとするところも酷似しています。そして、当時も同じで外国人労働者の処遇は低いまま、かつ、日本人もその低い水準に留め置かれる危険性が大なのです。当時も生産力向上は大きく叫ばれたはずですが、今の日本も働き方改革で生産性向上をうたっていますが、要はみんな働いて国家の危機を救えということ。あな恐ろしや。

今日はこの辺で。