シンポジウム「ナショナリズムの誘惑」を聴いて

高円寺、阿佐ヶ谷、荻窪という中央線沿線の街は、同じ杉並でありながら、今までほとんど縁がなかったのですが、最近度々行く機会ができました。
高円寺については「座・高円寺」での芝居鑑賞が縁ですが、街を歩くと奥行きの深い賑やかな街です。
どこの街も、「街おこし」の一環でたくさんのお祭りを企画していますが、高円寺といえば、夏の「阿波踊り」だけかと思いきや、今では高円寺4大祭りが季節ごとに実施されているとのこと。
先週の週末に実施されたのが秋のお祭り、「高円寺フェス2012」。その一つのイベントとして、座・高円寺で「ナショナリズムの誘惑」と題するシンポジウムが開催されるということで出かけて行きました。
尖閣竹島問題を契機に先鋭化したナショナリズムが話題になる中、いわゆる大手ではないジャーナリストや映画監督の貴重な話が聞けました。
出席者は、在特会在日特権を許さない会)を取材して「ネットと愛国」という本を書いた安田浩一氏、ユーゴスラビア崩壊後の民族紛争を取材し、サッカーにも造詣が深い木村元彦氏、そして次々に話題作を発表して今一番注目されている園子温監督の3人。
安田氏は、在特会会員のほとんどが、仲間を求めたいという普通の若者がネットを通じて集まり、醜悪なまでの外国人の排斥を訴えるという危うい側面を指摘し、右も左も含めて大手のジャーナリズムが彼らを取り上げない現実を語りました。
木村氏は、チトー時代までは見事なまでに民族が融和していた民族が、何かの拍子=人為的な何かの作用によって、血で血を洗う紛争に発展して行った過程を語りました。
園監督は、韓国の釜山映画祭に行った時の反応を披露し、市民はそんなに竹島=独島を欲していないというエピソードを語り、ジャーナリズムは決して真実を伝えるシステムではないことを語りました。
このシンポジウムを聴いていて、誰が尖閣竹島問題を煽っているのかが透けて見えます。中国、韓国、そして日本の政治家や学者であり、それを盛んに報道するメディアが煽っているしか思えません。今の日本の領土問題への思考は、軍事力をバックにしなければいずれは尖閣竹島も失うというものに傾斜しています。これこそが危険な風潮ではないでしょうか。ユーゴのコソボ自治州では、イスラム系住民=アルバニア系とセルビア系住民が反発しあっています。そして、アルバニア系住民が見るテレビアンテナは全てアルバニア方向を向き、一方的な情報のみを受入れています。勿論セルビア系は全く逆な情報を受け入れています。同じ一つの学校に通う小学生でも、入口は二つに分かれ、校内も行き来できないように仕切られているという異常な風景が今でも続いており、お互いの憎悪が増幅してしまうという大変残念な現状です。これでは一向に紛争は解決されないでしょう。
中国における反日教育反日番組の垂れ流しが話題になりますが、少なくとも日本では反中、半韓教育が行われないようにするのは勿論のこと、反中、反韓を煽るような政治家の発言やメディアの報道は厳に控えるべきだと思います。
今日はこの辺で。