中山七里「死にゆく者の祈り」

多作で知られる中山先生の作品はほとんど読んでいますが、中には未読もあり今回読んだのが「死にゆく者の祈り」。多作とはいえ、一定水準以上の品質は保っており、誠にあっぱれであります。

本作の主人公は高輪顕真という浄土真宗のお坊さん。読む限り相当大きなお寺さんで、5年ほど前に修業を積んでお坊さんになって、今では刑務所の教誨師もやっている方。顕真さんはある時、刑務所で受刑者を前に説教することに。そしてその受刑者に、大学時代の登山で命を助けられた関根要一が死刑囚として収監されていることを知る。関根は5年前の夜の公園で若い男女のカップルを殺害した罪で死刑判決を受け、控訴せずに確定していた。20年以上音沙汰がなかったとはいえ、大学時代の関根の言動を知っている顕真には、彼が殺人を犯すとは到底考えられず面談し、彼の教誨師となり、事件の真相を探る動きをとる。

警察の協力者である文屋刑事と関係者への聞き込みを行い、一方では教誨師として関根に真相を話すように迫るが、関根は既に達観して死を待っている。お坊さんの分際で探偵ごっこをすることに周りからは非難があったが、罪のないものを死なせるわけにはいかないとの思い出、数少ない協力者を得て、関根がかつての恋人との間にできた自分の息子をかばっていることを突き止め、ついには冤罪を晴らすことに成功するという展開。中山先生独特の最後の最後のどんでん返しが用意されているが、真犯人は意外な人で、法務大臣が死刑執行のハンコを押して、執行時間すれすれで、警察の協力者である文屋刑事の再捜査で真犯人をあげることができる。

本作では死刑制度や親子関係などの法律関係の話なども盛り込み、読み応えのある作品になっておりました。

今日はこの辺で。