中山七里「死にゆく者の祈り」

中山七里先生が、冤罪事件を取り上げた「死にゆく者の祈り」読了。

主人公は浄土真宗僧侶で、教誨師を務める顕真さん。教誨師は受刑者に宗教の教えを説き、受刑者に道徳を教える方。顕真さんは、ある時刑務所でかつての親友と会う。その親友、関根氏は死刑囚であり、顕真さんの命の恩人でもあった。大学の登山部に所属し、剣岳で遭難し、関根に助けられたのだ。関根の人となりをよく知る彼は、関根の冤罪を信じて、僧侶や教誨師の枠を超えて、若き刑事、文屋の協力を得て冤罪を晴らしていくことになる。

文屋刑事のような、組織に逆らいような刑事がいるとも思わないし、僧侶で教誨師の顕真さんが、仏教界の中でこれだけのことができるのか?と、話がよく出来すぎている部分はありますが、教誨師という主人公を据えた斬新生と、予定調和的な話は、どうしても引き込まれてしまいます。特に関根の人生に隠された苦渋、顕真の人生の苦渋など、感動的な話が含まれており、中山先生のストーリーテラーとしての面目躍如でありました。

今日はこの辺で。