中山七里「合唱」

中山七里の岬洋介シリーズ第3弾、「合唱 岬洋介の帰還」を一日で読了。「もう一度ベートーヴェン」の続編の趣のある作品で、本作はミステリー中心。従ってピアノ演奏の詳細な場面ば出てきません。

続編たる所以は、前作の語り人である天生検事が被告人となってしまうところ。岬洋介がピアニストを再び目指すきっかけを作った天生さんが、凶悪犯罪者の担当検事になり、取り調べ中にその凶悪犯人を銃殺してしまうという事件に巻き込まれる。天生が容疑者と知った岬洋介が、欧州でのピアニストとしての活動をキャンセルして、天生を助けるために日本に帰国。早速調査を開始し、弁護士を選任し、弁護士資格がないにもかかわらず特別弁護人となり、父親が主任検事と務める本事件を解決してしまうという痛快なお話。

完全なる密室事件ではあるが、天生以外に犯人と考えられるのは検察事務官以外に考えられないのですが、実際の捜査でこんなずさんなことが警察・検察で行われるのかは別として、とにかく捜査機関の不首尾をこれでもかこれでもかと見つけ出していくストーリーには、若干違和感はあるものの、エンタメ小説としては一級品の出来でした。

なお、本作には中山作品で主役を張る人物が多数重要な役で出てきます。ヒポクラテスシリーズの解剖医、光崎教授、埼玉県警の古手川警部、警視庁の犬養警部、そして御子柴弁護士などなどのオールスターキャストが楽しめます。

今日はこの辺で。