中山七里「どこかでベートーヴェン」

中山七里作、岬洋介主演の学園ものミステリー「どこかでベートーヴェン」読了。中山先生はよっぽどクラシック音楽に造詣が深いのか、岬洋介が演奏するピアノのすばらしさを、これでもかこれでもかと実況中継してくれますが、この演奏中継部分はほとんど私の記憶に残らないので、ほぼ斜め読みで飛ばし、その他の行動描写に集中。

岐阜県の加茂地方の小さな町の高校が舞台。転校してきた岬洋介は17歳のピアノの天才。転校してきたすぐにその容姿や明晰さで女子高生の羨望の的となるが、ピアノ演奏を聴いてからは、その天才ぶりに嫉妬が上回り音楽家の生徒たちから疎外されてしまう。そんな中、嵐のような豪雨が発生し、岬に暴力をふるっていた生徒の一人が殺害される事件が起こる。岬が状況証拠から犯人にされてしまうが、そこから合点先岬洋介の推理が始まるという話。ミステリーとしての出来具合はそれほど褒めたものではないが、岬洋介の人物像がよく描かれ、ピアニストとして、かつ名探偵としての第一歩が踏み出される作品。

それにしても、頭脳明晰でかつピアノの天才でもある岬洋介が、田舎の小さな町の一流とは言えない高校に在籍すること自体が非現実的ではあるが、彼の在籍した半年間で、この高校の生徒たちに与えたインパクトは大きかったでしょう。この音楽家の生徒たちが再び顔を合わせて、みんながどんな人生を歩んでいるのかを想像するのも楽しみで、いつかそんな小説も読みたいものです。

今日はこの辺で。