中山七里「もういちどベートーヴェン」

中山七里先生のベートーヴェンシリーズ第二弾、「もういちどベートーヴェン」読了。前作の「どこかでベートーヴェン」は、高校の学園ものでしたが、前作でピアニストになることを諦めた岬洋介が司法試験に合格し、司法実習を受けるなかで一件の殺人事件の謎を解明するというミステリーと、再びピアニストになることを決意するまでの物語。前作同様、殺人事件を鮮やかに解決して見せる展開も鮮やかではありますが、主題は天才岬洋介の魅力を中心に据え、司法修習の同僚である天生さんがその岬洋介の動向を追うという展開で、これもまた前作の手法を引き継いでいます。従って、岬が全日本ピアノコンクールの関東予選と全国大会でベートーヴェンのピアノ協奏曲を演奏する描写が詳細に描かれ、クラシックの音符も読めない小生にはちんぷんかんぷんの描写で斜め読みするしかない部分はありましたが、こうした天才を扱う小説は痛快ではあります。ベートーヴェン水戸黄門は全く似て非なるものですが、勧善懲悪的なラストが待ち受けているという安心感には、つい引き込まれてしまいます。ミステリー部分については、同性愛を絡ませて、鮮やかに謎を解く姿は前作以上のものでした。

次回の岬洋介主人公作品を早速探すことにします。

今日はこの辺で。