中山七里「おやすみラフマニノフ」

中山先生の岬洋介シリーズの一作「おやすみラフマニノフ」読了。

ロシアの作曲家ラフマニノフの最高傑作と言われる協奏曲第2番の演奏を最後のハイライトとする本作もまた、クラシック音楽への中山先生の造詣が思う存分に発揮された作品。ミステリーは、誰がストラディバリウスのチェロを盗んだのか、誰がスタインウェイのピアノを水浸しにして破壊したのかの謎をはらみながら、音楽に生きる大学生とその大学で講師を務める岬洋介を中心に話が展開されます。

格好良さを存分に発揮するのはいつもの通り岬洋介ですが、実際の主人公は「ぼく」こと、城戸晶。晶はバイオリニストを目指す学生だが、母親がなくなって、実家の稼業も思わしくなく音大の学費も払えない状況の中、それでもあきらめきれずに、バイトをしながらバイオリンの練習に励む毎日。そんな晶に、学園祭での演奏のチャンスが生まれ、岬洋介の助言もありコンサートマスターに選出される。練習が本格する中、前期の2件の事件が発生し、ラフマニノフの合奏の前途は多難を極める。事件の犯人捜しよりも、晶を中心にした日々の出来事が中心に描かれ、最終盤に岬が謎を解き明かすという筋書きは、岬洋介シリーズの定番。

完全無欠のヒーロー、岬洋介にかかったら、どんなに深い謎も簡単に解決されるのも小気味がいいと理解しましょう。

今日はこの辺で