白石一文「光のない海」

白石一文「光のない海」読了。
白石作品を集中的に読んでいますが、本作も読みやすい語調で、すいすいと読めましたが、主題がどこにあるのかが若干あいまい。
少年時代に父親が家を出て母親に育てられた兄と妹。母親も少年が高校生の頃亡くなって、天涯孤独になった兄と妹。しかし、妹にかつて交通事故で障害を負わせた会社の社長の妻が兄妹の面倒を見ることに。その妻は既に女社長として会社を再拝していたのですが、兄の才能を見抜き、自分の会社に入社させ、後継者として育て、500人規模の会社を継がせる。この小説の主人公はその兄が主人公で、既に社長としての経歴が10年を数える50歳。彼の周りで起きる、あるいは過去に起こったことが語られるのですが、非常に人情味のある男として描かれます。社長としての厳しさを持っていることは通じますが、最初に出てくる女性、花江との関係も中途半端、花江の祖母をここまで面倒見るところも不可思議。
20歳以上年の違う女社長との関係と、その娘と結婚して離婚する経緯も若干言葉足らず。
いろいろなエピソードが盛り込まれて、読んでいて先を読みたくなるのは魅力的なのですが、もう少し説明がほしいような気がしました。
また、花江とこれからどうするのか?あとは読者に想像させる手法で余韻を残しているのかもしれません。
今日はこの辺で。