桜木紫乃「ワン・モア」

桜木紫乃「ワン・モア」読了。表題作を含め6篇の連作短編小説。桜木さんの作品は、北海道道東を舞台にし、人間関係を映し出す手法はどの小説も同じですが、どれを読んでも飽きることがなく、シチュエーションもバラエティに富んでいます。素晴らしいストーリーテラーです。
最初の「十六夜」は、家族の安楽死希望を聞いて市民病院から小さな島の医院に左遷された女医,
柿崎美和の不毛な生活を描く。そこにはやはり薬物疑惑で水泳を捨てた男がおり、不倫を重ねる。
「ワンダフル・ライフ」は、柿崎美和の元同僚で、個人病院を経営する滝澤鈴音ががんに侵され、柿崎美和に後を託すまでの物語。
「おでん」は、レンタルビデオの店長、佐藤亮太が、あこがれの女性を同居する姿を描きます。
「ラッキーカラー」は、滝澤鈴音の病院で看護師をする浦田寿美子が、50歳を前にして、かつての患者さんと一緒になる物語。
「感傷主義」は、かつて柿崎美和と滝澤鈴音と一緒に医学部を目指したものの、力と財力が足りず放射線技師となった八木浩一の一種のコンプレックスを描く。
最後の「ワン・モア」は、余命半年程度とされた鈴音の病状が、美和の賭けともいえる治療で改善し、登場人物全てが明日への希望を持てるようなハッピーエンド。
こんなに簡単に書きますが、それぞれの短編は深い味わいがあります。
今日はこの辺で。