桜木紫乃「凍原」

桜木紫乃「凍原」読了。桜木さんには珍しい本格的なサスペンス小説。序章では17年前の釧路湿原での少年行方不明事件と、終戦直前の樺太での事件を印象的に描きます。その後、少年行方不明事件の少年の姉が刑事となり、自動車ディーラーの青年の殺人事件を追っているうちに、次第に序章での二つの事件が絡んできて、息を尽かせない展開が続きます。
一つ残念なのが、殺人事件の加害者の動機がちょっと解せないところです。あの程度のことで、果たして簡単に殺人ができるのか?松本清張の「砂の器」と同じく、過去を知られたくない加害者はやはりその事実をどうしても隠したくなるのか?老い先短い老人が青年を犠牲にできるのか?
この辺が若干不可解なところがあり、桜木さんの作品では中の下といったところでしょうか。
今日はこの辺で。