桜木紫乃「ホテルローヤル」

桜木紫乃直木賞受賞作「ホテルローヤル」読了。「ホテルローヤル」というラブホテルを舞台にした短編7編が収められて連作短編集。最初の「シャッターチャンス」はすでに廃墟となったホテルで、写真マニアの男が、彼女の裸を撮ろうとする話で、その後の短編は時代をさかのぼって話が続き、最後の「ギフト」がラブホテルを建てる男の話。ただ、この中で5番目の「せんせぇ」には、ホテルローヤルが出てこない。但し、高校の教師と不良生徒が列車で釧路方面に向かうという暗示があるのみ。
「ギフト」でラブホテルを建てる大吉は、妻に離婚され、身ごもった若い愛人と一緒になり娘が生まれるが、その娘が「ギフト」の30年後の話「エッチ屋」の主人公としてホテルローヤルを経営している話が出てくるのですが、そこではじめて、「せんせぇ」で出てきた教師と女生徒の心中事件があったことがはんめいするなど、どこかでホテルが関係しているのが非常に巧みにできていて面白い。200ページ弱の薄い連作短編でありますが、北海道釧路湿原の冷たい雰囲気と複雑な人間模様が興味深く語られ、直木賞に値する小説であることを納得。
今日はこの辺で。