天童荒太「悼む人」

天童荒太直木賞受賞作「悼む人」読了。一連の天童作品、「家族狩り」、「永遠の仔」、「あふれた愛」を読み、先行して「悼む人・静人日記」を読んできましたが、いずれも次をすぐに読みたくなるような、読者をひきつけるものがあり、この「悼む人」も同様。
坂築静人という主人公が死者を悼むために旅を続ける、その情景を丹念に描いたのが「静人日記」でしたが、本作は、彼と関わった3人、母親の坂築巡子、週刊誌記者の蒔野抗太郎、そして夫を殺した過去のある奈義倖世を中心に物語が語られます。静人が奇妙な悼みの行動をすることに対して最初は理解できないものの、次第に静人に惹きつけられていく倖世と蒔野。死期をまじかにしても活発に生きる母巡子。
この小説でひとつだけ残念だったのが、母巡子が亡くなる前に、せめて電話の一本もかけて家に帰って死を看取ってくれたら・・・
母巡子の魅力的な人柄には特に強い印象を受けました。
今日はこの辺で。