横山秀夫「64(ロクヨン)」

横山秀夫「64(ロクヨン)」読了。横山作品としては、「震度0」以来となる長編。この間5~6年、横山さんが書けなくなり、うつ病も発症したとのこと。横山ファンとしては、非常にうれしい復帰のニュースで、一日も早く読んでみたかった作品。
久しぶりに作品で、なおかつ発売が夏以降であったにもかかわらず、この「ミステリーがすごい」と「週刊文春ミステリー」のNO.1を獲得したのは、さすがに横山の力と、そしていかにファンが多いかの証拠でしょう。
さて、内容ですが、警察の組織と人間関係、それに絡めて昭和64年の7日間に起きた誘拐事件を絡めた濃密なサスペンス。さすがに読み応え十分な筆致。根っからの刑事畑ながら、県警の広報官になった三上刑事を主人公として、キャリア警察官の県警本部長、警務部長の東京派と、刑事部長を中心とする県警はえぬき派に挟まれ葛藤する姿をこれでもか、これでもかの表現で強調します。最後はアッと驚くラストが待ち構えていますが、決して不自然ではないのがさすが。
ただし、一言苦言を言わせてもらえるならば、“あまりにも長い”です。せめてこの半分程度に収めてもらえれば手軽に読めるし、もっと本も売れるのではないでしょうか。
横山の真骨頂は、主人公の心の内面を精緻に表現することで、どうしても長くなってしまうのかもしれませんが、すぐれた短編もたくさん書いている作家。300ページに収められる小説にできたのではないかと感じました。
ともかく大好きな作家が復活したことで、楽しみが戻ってきました。なるべく早く次の作品を読みたいものです。
今日はこの辺で。