池井戸潤「下町ロケット」

池井戸潤直木賞受賞作「下町ロケット」読了。待ちに待った増刷がやっと店頭に並び、さっそく大枚をはたいて購入(図書館派の私にとっては痛い出費)。それでも、買っただけの価値がありました。
大資本に立ち向かう中小企業の社長をはじめ、社員の奮闘ぶり、それを応援する周りの人たち。先日も書きましたが、前直木賞候補作「空飛ぶタイヤ」の続編のような内容ながら、読ませてくれました。続きがすぐに読みたくなるのはこういう作品のことではないでしょうか。
かつて宇宙開発機構の研究員だった佃は、ロケット発射失敗の責任をとるような形で機構を辞め、父親の経営していた会社を継ぐことに。彼は経営者としても才能を発揮し、事業は大きくなるものの、大口の取引先から取引中止を言い渡されピンチに。おまけに過去からの研究開発費がかさみ、資金ショート寸前。取引銀行も、会社が調子悪くなると打って変って冷たくなり、事業資金が運転資金が心もとなくなってくる。そんなピンチの時に追い打ちをかけるように大手の同業者から特許侵害の訴訟を起こされ、絶体絶命のピンチ。しかし、世の中捨てたもんじゃない。財務を圧迫していた研究開発費の成果であるロケットエンジンのバルブシステムが光明をもたらす。おまけに特許侵害訴訟は、大勝利に終わる。
その後の展開は、バルブシステムの特許を独占使用したい帝国重工と佃製作所の思惑のぶつかり合い。何とかメーカー(というよりモノづくり企業)としての価値を高めたい佃社長と、特許使用料で楽に金を稼ぎたい社員たちの確執も挿入され、読む者を飽きさせません。
最後はハッピーエンドとなるのですが、読みやすい文体と夢のあるストーリー展開は池井戸小説の真骨頂。お勧めの一作ですので、是非お読みください。
それにしても、直木賞発表時に書店に本がないというのはやはり失敗ではないでしょうか。私の自宅近くの書店で平積みされていますが、売れ行きはいまいち?池井戸さんが憤るのも無理がない気がします。
今日はこの辺で。