藤沢周平「暗殺の年輪」

藤沢周平直木賞受賞作「暗殺の年輪」。表題作ほか前5編の短編集。
表題作「暗殺の年輪」と「ただの一撃」には、少なからずの衝撃あり。
「暗殺の年輪」は藩内の派閥争いの中で、ある中老の暗殺を依頼された若侍。その中老とは、かつて父が同じく命を狙ったものの果たせず、母が息子のためにその中老に「身を売った」との噂がある。残酷にも息子は母にそれをただしてしまう。母は翌日自ら命を絶つ。息子は正に両親の敵として中老を狙うが・・・。
「ただの一撃」もまた衝撃を覚える。藩命により仕官を求める浪人との立会いを求められた老武士。普段の様子からはとても剣士には見えないが、実は藩有数の使い手。この藩命を受け身体を鍛えるために家を空ける。そして家に帰った老武士は、唯一の理解者でもある息子の嫁を女として求め、その嫁も身体を許す。翌日の朝、その嫁は自害してしまう。老武士は見事に浪人に勝つのだが、嫁の自害に何を思う・・・。
二人の聡明な女、母と嫁が自害するという理不尽に、武士社会の厳しい一面を垣間見る思いではあるが、もっと違う設定はなかったのか?貴重な命を残すことが出来なかったのか?残念であります。
勿論小説的にはすばらしい出来なのですが。
今日はこの辺で。